脚の切断、大半が免れる 日本医大や岡山大など実施 |
糖尿病や閉塞(へいそく)性動脈硬化症が原因でできた足のかいようや壊疽(えそ)を、無菌で育てたウジ虫できれいにする治療に、日本医大のグループが取り組んでいる。他の医療機関で「脚を切るしかない」と言われていた患者の大半が切断を免れたといい、四月半ばから医療機関向けにウジの販売を開始。3年前から導入している岡山大グループも成果を上げており、褥創(じょくそう)(床ずれ)への応用も期待されている。
▽耐性菌で復活 治療には@血流改善A感染制御Bかいよう・壊疽の治癒―が重要だが、日本医大の宮本正章准教授(内科)は「血流を良くしても、感染防止や難治性かいよう、壊疽の治癒が難しいケースがある」と説明。「敗血症になって脚を切断せざるを得ない患者を何とか救えないか」と、英語でウジ治療を意味する「マゴットセラピー」に着目した。。 ウジを使った治療は古くから行われていたが、抗生物質の登場で1940年代以降は姿を消した。しかし、複数の抗生物質が効かない多剤耐性菌の広がりによって欧米で復活、2004年には 米食品医薬品局(FDA)が医療用ウジを生体材料として認可した。 ウジはヒロズキンバエという、ありふれたハエの幼虫。無菌状態にした卵からかえって約2週間のウジを傷口に置き、ガーゼと包帯で覆って、2日後に取り除く。「これを平均2回繰り返すと、壊死した組織だけ取り除かれ、新しい肉が盛り上がってくる」(宮本准教授) ▽副作用なし 宮本准教授らは04年12月からこれまでに19人に実施。いずれも「脚の切断しかない」と他の医療機関で診断されて来院した患者だが、ウジ治療できれいになった部位に自分の皮膚や人工真皮を移植するなどして、17人は切断せずに済んだ。 ウジが出す生理活性物質が神経に触れると痛むため、患者によっては麻酔をかけることもあるが、マゴットセラピーの副作用はないという。 ▽毎年2万人 宮本准教授らが設立したベンチャー企業「バイオセラピーメディカル」(滋賀県長浜市)は、ウジ150匹を1万7千円で医療機関向けに販売。扱いやすいよう網目状の袋にウジを入れる手法も導入する予定だ。 糖尿病や動脈硬化症などで脚を切断される人は、年間約2万人に達する。患者の骨髄幹細胞を患部に注射し血管を再生させる治療にも取り組んでいる宮本准教授は「1人でも多くの患者が、自分の脚で歩いて帰宅できるようにしたい」と話している。(共同通信 影井広美) + font> |