東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

トヨタ減益 世界経済後退に備えよ

2008年8月11日

 ついに来るべきものが来た感がする。トヨタ自動車の減益決算は米国に端を発する世界経済の後退を象徴しているからだ。米国依存度が高く後退局面の日本経済にとって厳しい警戒信号と見たい。

 トヨタ自動車が発表した二〇〇八年四−六月期連結決算は、四半期ごとの決算を発表し始めた〇二年以来初めて減収減益となった。

 トヨタは日本の輸出産業の先頭に立って右肩上がりの好業績を続けてきたが、ここへ来て米国での販売不振など悪条件が重なり、世界一の自動車会社にブレーキがかかったといえる。

 米国では低所得者向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発する景気減速が長期化する様相である。それに原油高、食料を含む資源高が加わり、消費者の購買力は衰え始めている。

 これまで米国の消費者は、さまざまなローンを組んで、収入を上回る消費を続けてきた。この楽天的な経済の仕組みが崩れ始めたとみて間違いなかろう。

 自動車で言えば、燃費の高い大型車がガソリン価格の高騰で売れなくなり、燃費の良い小型車志向が強まっている。大型車中心に生産してきたゼネラル・モーターズ(GM)など米大手三社は極端な販売不振に陥り、赤字決算を続けている。資産売却や人件費削減などリストラを連発しているが、経営は危機状態にあるとみられる。

 トヨタの減益も北米、欧州での販売不振と原材料価格の高騰が主因である。中国、インドなど新興国での販売拡大やハイブリッド車など燃費の良い小型車への切り替えで失地回復に懸命だが、将来への不安はぬぐいきれない。

 同じ四−六月期決算でホンダ、スズキなど小型車中心のメーカーは原油高が追い風になり増益を続けている。低炭素社会に適したエコカー開発を含めると、日本の自動車業界が目指すべき未来が見えてくる。

 北米、欧州での不振はトヨタに限らない。日本の輸出産業は総じて欧米依存度が高く、大なり小なり同じ課題に直面している。

 各企業は新興国の市場開拓に力を入れている。しかし活発な成長を続ける新興国も基本的に北米依存度が高い。米国経済が後退すると世界経済の混乱につながる危険をはらんでいる。

 トヨタは通年では業績を回復する自信を見せているが、ここは後退局面に入った日本経済への警戒信号と受け取り、経済の構造改革と産業基盤拡充をより進めたい。

 

この記事を印刷する