どんな世界にも名人と呼ばれる人たちがいる。北京五輪に出場するトップアスリートたちを支えているのが、選手特注の用具を一つ一つ丹念に作り上げる名人の技だ。
福原愛選手の卓球ラケット、野口みずき選手のマラソンシューズ。選手とともに、頂点を目指して究極の用具を生み出す職人たちを「日本の職人技」(永峰英太郎著、アスキー新書)が紹介している。
卓球ラケットの職人は千原悟さんだ。府中市で家具作りに携わっていたが、二十二歳で卓球用具専門メーカーに入り、以来半世紀近いキャリアを持つ。三歳から卓球を始めた福原選手は千原さんのラケットをずっと使ってきた。
スポーツシューズ作りの名人として知られるのが三村仁司さん。有森裕子さんや高橋尚子さんら歴代のマラソン女子五輪メダリストの靴を手掛けている。アテネでは野口選手がゴール直後、金メダルをもたらしたシューズに口づけをした。
三村さんは選手の走法やコースの状態などを見極めながら、大会ごとに時代の最先端をいくシューズを作ってきた。妥協を許さない姿勢が選手から絶大な信頼を得る。
北京では女子マラソンの中村友梨香選手(天満屋)らも使用する。どんなドラマが繰り広げられるのか。主役は選手だが、陰で支える職人技にも注目してみたい。