暑さのため赤ちゃんがおむつかぶれを起こしやすい夏。一方で海水浴やプールなど水遊びの機会は増える。「うちの子、おむつをしてなかったら楽なのに」と考えたことはありませんか? 東南アジアやアフリカでは、おむつを当てないのが一般的な国が多く、日本でも「おむつなし育児」に取り組む母親グループがいる。最近の事情を紹介したい。【中村美奈子】
■生後2カ月から
東京都中野区に住む生後4カ月の近藤瑠虹(るか)くんは、毎朝トイレでうんちをするのが日課だ。午前5~6時ごろ起きておっぱいを飲み、すぐおしっこ。排便はその約30分後。母の知子さん(34)は、瑠虹くんが生後2カ月になった直後から、補助便座を置いてトイレを使わせ始めた。
「便秘がちだったが、トイレにしてからは毎日出るようになった。おむつをして寝た姿勢より、座った方が排便する時に楽なのでは」と知子さん。一応おむつはしているが汚すのは1日1、2枚だけ。それもおしっこで少しぬれる程度だ。
知子さんは津田塾大学国際関係学科の三砂ちづる教授の研究チームが呼びかけ、今春からスタートした「おむつなし育児」の実践メンバーの一人。メンバー約40人はNPO法人「自然育児友の会」(東京都国分寺市)の会員が中心だ。
研究は、トヨタ財団の助成で昨年から始まり、文献研究や聞き取りを実施。今年度は実践メンバーとネットで情報交換しながら、毎月ミーティングを開き、経過を報告してもらっている。
■親の感受性磨く
研究の狙いは排せつを通じて、親子のコミュニケーションを良くし、親に人間の生理を考えてもらうことで身体能力の高い子を育てること。おむつなし育児はソニー創業者の故・井深大氏も関心を寄せていた。氏が理事長を務めていた幼児開発協会(当時)は80年代半ばから研究に取り組んでいたが、ノウハウを確立するには至らなかった。ノウハウを残すことも研究の目的だ。
7月中旬、東京都国分寺市の畳敷きの会議室で開かれたミーティング。研究チームと実践メンバーの母親ら約35人が車座になり、1カ月間の赤ちゃんの変化を報告し合った。「赤ちゃんのサインをキャッチできるかが重要。決して赤ちゃんのトイレトレーニングではなく、親の感受性を磨くトレーニングです」と研究チームの和田知代さんは話す。
現在、おむつは3歳までに取れればいいとされる。そのため、「赤ちゃんはおむつをしているもの」と考えがちだ。だが生後2カ月にもなると、赤ちゃんは排せつ前に「サイン」を出す。▽足をばたつかせる▽声を出す▽気張る--などだ。
特に大事なのはタイミング。朝一番や昼寝の起きがけ、授乳後にトイレに連れていく人が多い。「タイミングさえ逃さなければ意外と簡単。初めて試したのも朝起きた直後で、便座に乗せるとおしっこがすぐに出た」と前出の知子さん。
回数を重ねるうち、赤ちゃんはおむつをぬらすことが少なくなる。すぐに一日中おむつなしにするのは難しいが、暑い間は昼間は裸にさせ、夜間や外出中はおむつをさせている人もいる。おむつは布製を使っている人がほとんどだ。「おむつを洗う枚数が減った」との声も聞かれた。
生後4カ月の堀田広人君の母でメンバーの史恵さん(31)=横浜市=は「1人目の時は、いつおしっこしているか全然分からなかった。今は行動パターンが分かっているので対処しやすい」と言う。
月齢は低い方が始めやすいようだ。和田さんは「生後6カ月を過ぎるとおむつの中でおしっこするのを学習してしまう。小さいほど高い確率で成功している印象だ」と話す。=次回は17日に掲載
毎日新聞 2008年8月10日 東京朝刊