理解に苦しむ対応である。自民、公明両党は次の臨時国会をいつ召集するか協議しているが、まとまらず、福田康夫首相が当初、検討していた今月下旬の召集は見送られる可能性が強まっている。
福田首相は「暮らし」や「国民の目線」を重視するといい、今度の改造内閣を自ら「安心実現内閣」と名付けた。原油高や食料品の高騰、景気の先行き不安など、その国民生活が今、脅かされているのだ。毎日新聞が、早急に国会を開き、与野党が真剣に議論するよう再三求めてきたのはそのためだ。
ところが、国民の目線とはほとんど関係のない理由で「国会をすぐに開きたくない」という声が強まっているという。
元々、首相が8月下旬の国会召集を検討しているのはインド洋で海上自衛隊が給油活動をする根拠法である新テロ対策特別措置法が来年1月に期限が切れることから、同法を延長するため審議時間を確保したいというのが主な狙いだ。
これに待ったをかけ、9月下旬召集を主張しているのが公明党だ。同党は延長には慎重で、特に民主党など野党が反対する中、衆院で再可決する事態となれば世論の強い反発を招くという懸念があるという。
加えて公明党は来夏の東京都議選を重視しており、衆院選との共倒れを避けるため、衆院解散・総選挙は年内から来年初めを望んでいる。特措法延長の再可決と解散時期が重なれば一段と衆院選は不利になるという計算もあるのだろう。
つまり特措法問題は衆院選後に先送りした方がよいというのが本音とみられ、これが無理をして早期に召集する必要はないとの主張になっているようだ。
早期の衆院解散は私たちも以前から主張しているところだ。特措法を延長するかどうかは慎重な議論が必要なのも確かだ。しかし、こうした経緯を見れば、公明党は党の都合しか考えていないと言われても仕方があるまい。
特措法の延長問題は日米関係や日本の国際貢献をどうするのかというテーマにつながる。だからこそ、国会という表舞台で、衆院選前に議論すべきなのだ。各党が国会でどんな論議を戦わせるかは、衆院選での有権者の判断にもつながるからである。
自民党も含めて与党内には依然として「最近の物価高や『居酒屋タクシー』をはじめとする税金の無駄遣い、中国製ギョーザ問題など、国会を開いても野党に攻め込まれるだけだ」との声がある。
政権与党のプライドを捨ててしまったのだろうか。これではいくら新しい経済対策を打ち出しても国民にはアピールしない。
民主党も臨時国会は冒頭から審議に復帰する方針のようだ。まだ準備は間に合う。早く夏休みを終え、国会を開くべきである。
毎日新聞 2008年8月10日 東京朝刊