生と死をめぐる緊迫の人間模様からか、ドラマや映画では医療がしばしばテーマとなり、現在もドクター・ヘリの活躍を描く「コード・ブルー」、地域医療のあり方などを問う「Tomorrow」がテレビで人気を呼んでいます。
「コード・ブルー」とは「緊急事態発生」を知らせる救急救命センターの隠語の一つだそうですが、医療の分野ではさまざまな専門用語や略語が日常的に使われます。自分が病院に行ったときや医療関係者から取材した際も、言葉の理解や言い換えに頭を悩ませた覚えがあります。
病院で使われる言葉の中から難しい百語を選び、国立国語研究所(東京)がいま、分かりやすく言い換える提案を行っています。十月ごろに中間発表を行い、来年春までに指針をまとめる段取りです。
例えば「寛解」。症状が一時的あるいは永続的に軽減した状態を言いますが、「完治」と誤解されることもあるそうです。このほか、合併症、予後、カテーテル、生検などの言葉が選ばれ、対象の用語はホームページで公開されています。
医療は医師へのお任せではなく、患者がともに歩調を合わせて進めなくてはなりません。言葉の誤解をなくし、病状や治療法について医療側と患者側が互いに納得しあうことが大切です。
百語の中には「インフォームドコンセント」も含まれます。「十分な説明と同意」などと訳され、近年、医療現場で徐々に浸透してきたこの言葉の重みを、国語研究所の取り組みにあらためて感じます。
(社会部・中田秀哉)