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2008年8月10日

◎好調な台北便 「双方向」の強みが生きた

 小松―台北便の就航二カ月間の搭乗率が80%を超え、きわめて好調に推移しているの は、利用者の大部分が日本人で占められ一方通行の感がある上海便と違って、日本、台湾それぞれの利用者が相互に行き交う「双方向」の強みが発揮されているからであろう。国際定期便は搭乗率65%を維持できれば合格とされるが、県などは快調な出足にあぐらをかくことなく、双方向の利用促進に一層努めてほしい。高い搭乗率を維持できれば、おのずと増便の道も開かれることになる。

 六月の開設当初、台北発便は小松発便に比べて伸び悩み、60%に届かなかった。しか し、七月は小松発便を上回る88%に上昇し、関係者の懸念を吹き飛ばした。その要因について県は、名古屋から入国して小松から出国する団体客が主流だったが、その後、小松から入るツアーも増え、軌道に乗ってきたためと分析している。

 観光商品の充実によって、台北便が同時開設された宮崎との誘客競争で水をあけた格好 であるが、これで気を緩めてはなるまい。全線開通した東海北陸自動車道も生かした多様な広域観光商品をたえず企画し、台湾側に提案していく積極性が必要である。

 観光面に限らず、台北便の利活用は北陸一体の取り組みが重要であり、県が十一月に台 北で開く観光物産展に富山、福井県の参加を呼び掛けるのはもっともなことである。

 台北便の維持発展のためには、石川と台湾の歴史や、日本統治時代を経てはぐくまれた 日台の「親近感」を次の世代に伝えていくことも大事である。その意味で例えば、石川と台湾の深い縁を結んだ八田與一技師を題材にした長編アニメ映画が今秋公開されることも好材料である。アニメの上映はこの地と台湾の結びつきをさらに強め、台北便の利活用にも弾みをつけることになろう。

 地域レベルの交流に影響を及ぼさずにおかない政府同士の関係をみると、尖閣諸島沖の 船舶事故で一時ぎくしゃくしたが、台湾側は対日定例会議を設置するなどして関係強化に乗り出している。こうした順風を生かして台北便を安定軌道に乗せたい。

◎民主党代表選 有力候補の論戦を期待

 九月二十一日に投開票される民主党代表選は、「次期首相」を決める選挙になるかもし れない。衆院選の結果次第とはいえ、結党以来、民主党が政権を手にする最大のチャンスが巡って来ているのは間違いないだろう。

 ただ、立候補予定の小沢一郎現代表に対抗しうる有力な候補がいっこうに現れないのは どうしたことか。天下分け目の戦を前に、党内にしこりを残したくないという思いが強過ぎて、立候補しにくい空気があるのだとしたら、残念というほかない。

 政権を目指す政党の党首を決める選挙は、複数の有力候補が立ち、熱気あふれる論戦を 交わす場であってほしい。日本を変えるという熱意を国民に見てもらうよい機会ではないか。無風のままやり過ごそうとせずに、政権担当能力をアピールする場として活用してもらいたい。

 小沢代表の対抗馬と目される有力者のうち、菅直人代表代行、鳩山由紀夫幹事長は早々 に小沢代表支持を打ち出した。前原誠司副代表も既に代表戦不出馬を表明し、岡田克也副代表、枝野幸男元政調会長や野田佳彦広報委員長は音無しの構えである。

 前原副代表は、自らの出馬を否定する一方で、「代表選挙は必ず行われるし、行われな いといけない」と述べたが、この指摘は当然だろう。先の参院選のマニフェスト(政権公約)には、農家の戸別所得補償制度や子育て支援策などについて財源の裏付けがない。寄り合い所帯の党内で、安全保障問題を含めて「この国のかたち」をどう方向付けるか。国民の側からすれば、民主党の政策担当能力を見極める格好の場になるはずだ。

 それなのに、党内から無投票を支持する声が出てくるのはどうしたことか。小沢代表に 近いベテラン議員から「自民党との権力闘争があるときに党内闘争がいいのか」と、対抗馬をけん制する声すら出てくるのは理解しがたい。

 大政党なのだから、一枚岩でないのは当たり前だろう。あつれきを恐れず、オープンな 政策論争を通じて、マニフェストを具体化する努力をしてほしい。


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