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厳重警備に打撃 米国人観光客襲撃 責任問題に発展も
【北京=福島香織】五輪が開幕したばかりの北京で9日に発生した米国人観光客への襲撃事件は、150万人態勢の厳重な警備で臨んだ北京市公安当局に大きな衝撃を与えている。犯行理由などは捜査中だが、犯行の背景や状況次第では中国側の責任問題にも発展しかねない。
五輪開幕に先立ち、国営中国中央テレビは「五輪の治安維持は失敗が許されない挑戦だ」「シドニー五輪、アテネ五輪よりも警備は厳重だ」との馬振川・北京市公安局長の見解を伝えていた。当局は、五輪を前に中国各地でバス爆破事件などが相次ぐなかにあっても警備に自信を示し、外国からの観光客などの安全を守ることは、国家のメンツをかけた重要な任務だとし位置づけていた。
公安当局によれば、解放軍の対テロ特別部隊のほか、全国から集めた精鋭の警察官ら11万人で構成する五輪治安部隊、140万人の治安ボランティアが北京市内の警備にあたっている。さらに、観光地などを中心に30万台の監視カメラも設置された。
今回の事件が発生した観光名所の「鼓楼」の付近も、監視カメラや治安ボランティアが多く配置された地域だった。それでも犯行を防ぐには至らなかった。
中国では3月、観光地の陝西省西安市で、オーストラリア人のツアーバスが、爆発物を体にまいた中国人に乗っ取られる事件が発生し、犯人は射殺された。7月には北京市の最も警備が厳しいとされる大使館区でを歩いていた日本大使館の職員が、中国人の暴漢に襲われ負傷している。
いずれも動機は不明だが、インフレによる生活苦などの社会不満が高じていることも背景の一つではないか、とみられている。日本大使館はウェブサイトを通じ日本人観光客に注意を呼びかけている。