株主優待制度:廃止企業が急増 昨年を大幅に上回るペース

 株主への優待制度を廃止する企業が今年、急増している。7月末までに廃止を発表した上場企業は少なくとも12社に上り、昨年1年間の10社を上回った。外国人株主の増加などで、利益還元の公平性を保つため廃止した企業が半数を占める。個人株主を呼び込むために過熱気味だった優待制度も、株主構成の変化で曲がり角を迎えたようだ。

 12社は、他社による子会社化やTOB(株式公開買い付け)などでの上場廃止に伴い優待制度をなくした社を除いた数。新日本石油は、保有株数に応じ3000~5000円分のガソリン代を還元する優待制度を今年9月末で廃止する。「株主の期待に応えるには現金配当の充実こそが有効と判断した」(IR部)といい、代わりに09年3月期に8円の増配を決めた。同様の理由で廃止した企業は他に、ゼンリンなど5社あった。

 優待制度は、自社製品などへの理解を深めてもらう目的で始まった。当初は、配当のおまけ程度だったが、バブル経済期にブランド米や宝くじなどユニークな優待を行う企業が出現。バブル崩壊後は、企業同士の株の持ち合い解消が進み、個人の安定株主を広く取り込むため、導入が相次いだ。企業にとっては増配よりも安上がりで、無配でも優待を充実させる企業もある。

 大和インベスター・リレーションズの調査によると、優待制度のある上場企業は現在、28%にあたる1110社。調査を開始した92年の4倍に増えた。

 しかし、近年は外国人株主や機関投資家が増加。国内での優待の恩恵に預かれないため、増配の要求が強まっていた。外国人株主比率が当時4割を越えていたヤフーは05年に制度を廃止。新日石の今年3月末の比率は33%と前年比2.5ポイント増加していた。ソニーや任天堂、トヨタなどの国際ブランドの企業は制度を導入していない。

 野村証券金融経済研究所投資調査部ストラテジストの西山賢吾さんは「これまでの手厚すぎる優待制度を見直す企業は今後も増えるだろう」と話している。【松本杏】

毎日新聞 2008年8月9日 22時20分

文字サイズ変更
この記事を印刷
印刷

関連記事

8月9日株主優待制度:廃止企業が急増 昨年を大幅に上回るペース

ニュースセレクト アーカイブ一覧

 

おすすめ情報