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妊婦転送死亡:発生2年 産科医療改善まだ途上、医師や看護師不足に課題 /奈良

 一昨年8月の大淀町立大淀病院(大淀町)の妊婦死亡問題を受け、県内ではこの2年、周産期(出産前後の母子双方にとって注意を要する時期)医療の改善が加速した。しかし、昨年8月には橿原市の妊婦が搬送中に死産した。医師や看護師不足を中心に残る課題も多く、体制整備はまだ途上だ。【中村敦茂】

 今年5月26日には、高度な母子医療を提供する総合周産期母子医療センターが、県内最大の医療拠点である県立医大付属病院(橿原市)に開設された。都道府県で45番目の遅い出発だったが、同病院の母体・胎児集中治療管理室(MFICU)は3床から18床に増えた。新生児集中治療室(NICU)は21床から31床になった。県立奈良病院(奈良市)でも、NICU6床の増設計画が進んでいる。

 勤務医の待遇改善にも手が打たれた。県は今年度当初予算で県立病院と県立医大付属病院の医師給与引き上げや分娩(ぶんべん)手当の新設などに2億9200万円を計上。「全国最低レベル」とされた給与水準は改善し、年間給与は産科医で約200万円、医師平均で約100万円上昇。県は過酷勤務による離職防止や欠員補充の難しさの緩和を期待する。

 県は今年2月、勤務医の少なさをカバーするため、産婦人科の夜間・休日の1次救急に、開業医らが協力する輪番制も導入。4月には参加する開業医を増やして拡充し、一定の成果を出している。出産リスクが高くなる妊婦健診の未受診者を減らそうと、今年4月から妊娠判定の公費負担制度も始めるなど、他にも多くの策を講じてきた。

 それでもなお、厳しさは続いているのが現状だ。荒井正吾知事は周産期センター開設に際し、「難しいお産も含め、県内で対応できる態勢がほぼできあがった」と語った。しかし、それはフル稼働が実現すればの話。

 センターでは看護師約20人が不足し、NICUのうち9床は開設時から使えていない。このため実際のNICU運用は22床で、従来より1床増えただけ。受け入れ不能の主な要因となってきたNICU不足の実態に大きな変化はなく、大阪など県外へ妊婦を運ばざるを得ない状況は続いているという。

 待遇改善で、すぐに医師不足が解消したわけでもない。昨年4月に産科を休診した大淀病院の再開のめどは今も立たない。県立三室病院(三郷町)でも、来年4月以降の産科医確保の見通しが立たず、今月中には新規のお産受け付けを停止する可能性が出ている。

 この2年間で実現した改善は少なくないが、医師や看護師不足など、容易でない重要課題に解決の道筋はついていない。県などは、今年度設置した地域医療対策の協議会の議論で、現状打開に向けた模索を続けている。

毎日新聞 2008年8月9日 地方版

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