2008年8月9日(土) 東奥日報 社説



■ 脳神経外科は地域の悲願/西北五の高度医療

 西北五地域の医療拠点となる中核病院の青写真が見えてきた。

 五所川原市、つがる市、鯵ケ沢鯵ヶ沢,鰺ヶ沢,鰺ケ沢町、深浦町、鶴田町、中泊町の六市町で構成するつがる西北五広域連合の自治体病院長会議の方針案によると、中核病院には消化器内科、循環器内科、小児科、精神科、産婦人科など十九の診療科を設置する。

 病床数は合わせて四百四十四床。一般病床の利用率は85%、精神病床は80%を想定している。

 診療科の中で、同病院の目玉になるのが、脳神経外科と心臓血管外科の高度専門医療だ。特に西北五地域への脳神経外科の開設は、地域住民が長年、待ち望んできた悲願だ。

 西北五は県内で唯一、脳外科専門医がいない、いわば空白地帯。このため、脳梗塞(こうそく)、くも膜下出血など一刻を争う脳血管疾患に対応できなかった。

 患者は青森市の県立中央病院や弘前市の弘前大学医学部付属病院への搬送を余儀なくされているが、脳神経外科の開設によって、これまでの搬送時間が大幅に短縮でき、患者のリスクが緩和される。

 心臓血管外科は、狭心症や心筋梗塞への対応を強化する。特に、急性心筋梗塞に対応するため、冠状動脈疾患集中治療管理室(CCU)を整備する考えだ。

 とはいえ、計画を実現に結びつけるには、クリアすべき課題もある。

 その一つが、専門医の複数体制の構築だ。医療の質と安全を維持するために必要とされるが、現状は厳しい。県内の脳外科医、麻酔科医は絶対的に不足しており、今後増えるかどうかも分からないからだ。

 本県は脳卒中患者が多いが、脳神経外科の専門医は約四十人しかおらず、旧三市に集中していると聞く。これは、全国的にも最低水準の少なさだという。

 つがる西北五広域連合は「弘前大学や県の支援を仰ぎながら医師確保に努める」としている。だが、激務や訴訟リスクなどを背景に、脳神経外科医は全国的にさらに先細りする傾向にある。

 深刻な医師不足が指摘される中、いかにして常勤専門医を確保し、中核病院に集約するか。地域住民の悲願でもある脳神経外科の開設、そして機能的な運用を図るには、医師の確保が大前提となる。医療を取り巻く環境は厳しいが、関係者のより一層の取り組みが求められる。

 振り返ると、中核病院を含む西北五地域の自治体病院の機能再編成計画は、自治体の財政難や再編後の周辺病院の機能などをめぐり、これまで曲折を繰り返してきた。

 このうち、再編後の機能について、つがる市成人病センターと鯵ケ沢中央病院のどちらを病院として残し、どちらを無床診療所にするかが懸案として残っていたが、九月までに結論を出すことが決まった。

 しかし、無床診療所化という結論を当事者の自治体がそのまま受け入れるか不透明な要素もある。場合によっては、当初計画より既に約二年遅れている中核病院の建設、さらには再編成計画そのものに影響を与える可能性があり、予断を許さない。


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