友地こころちゃんの遺影のすぐ下に、宮崎駿監督から贈られた色紙が供えられた=神戸市灘区
宮崎駿監督から贈られた色紙。ポニョの直筆イラストが描かれている
7月28日、児童ら5人の命を奪った神戸市灘区の都賀(とが)川の増水事故で、犠牲になった同区の妻鹿(つましか)愛美(まなみ)さん(29)とめいの保育園児友地(ともじ)こころちゃん(5)の遺影のそばに、アニメ映画の宮崎駿監督のサイン色紙が供えられている。こころちゃんは宮崎監督の最新作「崖(がけ)の上のポニョ」を見に行くのを楽しみにしていた。こころちゃんの母の願いで、宮崎監督がポニョのイラスト入りの色紙を贈った。
「ふたりは青い青い海にいって たくさんのアブクや魚やクラゲと出会って またいつか もどって来るんだね」。色紙にはそう書かれ、監督直筆のサインが添えられている。こころちゃんと母の奈緒美(なおみ)さん(31)は8月に家族でポニョを見に行く約束をしていた。
奈緒美さんはせめて宮崎監督のサインを仏前に供えたいと、映画を制作したスタジオジブリに「娘が大ファンでした」とファクスで連絡した。こころちゃんと妻鹿さんにあてた色紙は5日に届いた。奈緒美さんは「天国の2人も喜んでいると思います」。ジブリは「宮崎監督個人でしたこと」としている。
妻鹿さんとこころちゃんは7月28日午後、自宅近くの都賀川の橋の下で雨宿りする姿が目撃されている。妻鹿さんがこころちゃんに手を回して抱えるようにしていた。2人はここで濁流にのまれ、河口まで流されたとみられる。
妻鹿さんは姉の奈緒美さん夫婦と同居。約1キロ離れた保育園へこころちゃんを毎日、送り迎えしていた。2人の遺体には後頭部や背中などに傷があったが、顔や胸はきれいだった。奈緒美さんは「流されながらも、愛美がこころを抱きしめて守ってくれたんだと、家族みんなで信じています」と声を詰まらせた。「まあちゃんはここちゃんをまもってくれてありがとう」。こころちゃんの姉のうららちゃん(7)も天国の2人にあてた手紙にそうつづった。(浅野直樹)