北京五輪がきょう開幕する。チベット問題で聖火リレーが混乱するなど盛り上がりが心配されたが、開会式に先立ち女子と男子のサッカーが始まり、五輪ムードは一気に高まってきた。期間中、どんな感動が生まれるか。期待を胸に楽しみたい。
アジアで夏季五輪が開かれるのは東京、ソウルに次いで三番目となる。五輪は世界的な平和とスポーツの祭典であると同時に、アジアでは国家としての成長の証しにもなる。日本、韓国とも五輪成功が国際的な地位向上につながる契機になった。
中国にとっても、五輪開催に託す思いは同じだろう。政府は北京五輪を「中華民族百年の夢」と呼び、国家の威信をかけて大会に臨む。開会式の開始日時を、中国で縁起がいいとされる「八」が重なる八月八日午後八時(日本時間同九時)に設定したのもうなずける。
世界のトップ選手が鍛え抜いた肉体と精神力の限界に挑む中、日本人選手の活躍が楽しみだ。柔道、水泳などの競技でメダル獲得の期待がかかる。
郷土勢の動向にも目が離せない。日本女子マラソン界の新星といわれる中村友梨香選手(天満屋)は、若さを武器に大胆なレースを展開してもらいたい。
岡山大からは学生や卒業生が出場する。陸上女子五千メートルの小林祐梨子(マッチングプログラムコース二年)、ライフル射撃男子の小林晋(岡山県警)、自転車マウンテンバイク女子の片山梨絵(スペシャライズド)の三選手である。晴れの舞台で輝いてほしい。
既に試合が始まったサッカー女子日本の「なでしこジャパン」では岡山湯郷ベル所属の宮間あや、福元美穂両選手の活躍が光った。今後が楽しみだ。柔道やボクシングなどにも出場選手がおり、朗報が待ち遠しい。
競技とは別に、人権や食の安全、環境問題など開催国の国情が世界からこれほど注目されるのは異例である。著しい経済発展の続く中国が大国としての存在感を増す中で、多くの国が中国の独善的な体質や閉鎖性などに違和感を覚えるからだろう。
国際社会が望んでいるのは、五輪を機に中国の民主化や国際協調が進むことではないか。名実ともに大国として認知されるには、中国が開かれた国家として変革するしかあるまい。その出発点として、平和と感動が共有できる五輪になるよう望みたい。
国際社会も中国を批判的に見るだけの姿勢は慎むべきだ。考え方や文化などの違いは違いとして認め、信頼関係を深め合う視点を忘れてはなるまい。
第十三回NIE(教育に新聞を)全国大会が高知市で開かれた。昨年は岡山市での開催だった。今年も全国の教育、新聞関係者らが参加し、教育現場での新聞の活用法をめぐって話し合った。NIE活動は、着実に発展している。
今年の高知大会では、今春告示された小中学校の改定学習指導要領が求める言語活動の充実とNIEの役割が大きなテーマだった。新指導要領は「ゆとり教育」を転換したほか、国語を中心にすべての教科で取り組む言語力の育成を目玉に掲げる。
背景には、日本の子どもたちが国際学力調査である経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査で、読解力や知識を活用する力が弱いとされたことがある。言語活動の充実で、コミュニケーション能力や判断力、表現力の向上も目指す。
高知大会に出席した文部科学省初等中等教育局の大倉泰裕教科調査官は、新指導要領について「言語活動の充実が今回の改定の一丁目一番地」と説明した。さらに「言語活動充実は各教科を貫いて行う。その際に新聞の活用が指摘されている」と新聞の役割を述べた。新しい指導要領には、言語活動の例として「新聞を読むこと」などが盛り込まれている。
学習内容などを示した指導要領に新聞の活用が明記された意義は大きい。世界や地域の生きた情報が詰まった新聞になじめば、社会の動きに興味や関心を持とう。NIEに取り組む教師たちからは、子どもたちに主体的な学習態度が見られるようになったとの声が聞かれる。
指導要領の改定を受け、授業の中で新聞を教材として活用していくには、NIE活動の実績を生かしながら一層の工夫が必要だろう。新聞社側も教育現場との連携を強めていきたい。
(2008年8月8日掲載)