8日の日中首脳会談は中国が威信をかける北京五輪の開会式当日に設定されるなど厚遇ぶりが目立ち、日中友好ムードを演出する場になった。しかし、福田康夫首相が臨んだ正式な首脳会談は日中だけで、韓国とは竹島問題のしこりから首脳会談が開けなかった。中国が大国の勢いを示す式典の陰で日本外交の抱える課題が浮かび上がることにもなった。
韓国からは李明博(イミョンバク)大統領が出席した。しかし、外務省幹部は「韓国世論を考えれば、とても会談をできる状況ではない」と語っており、日韓首脳会談については設定に向けた調整も行われなかった。金永南(キムヨンナム)最高人民会議常任委員長が出席している北朝鮮とも会談を行える状況ではない。中国の厚遇ぶりは日本のアジア外交の厳しい現状がかえって鮮明になった。
日中関係でも中国製冷凍ギョーザ事件に関する批判が高まるとともに、新疆(しんきょう)ウイグル自治区カシュガルで日本人記者が負傷した問題でメディア規制など中国政府に残る問題点も明らかになった。こうした新たな要素が加わったため、外務省などが当初想定していた成果が得られたとは言い切れない日中会談となった。【北京・坂口裕彦】
毎日新聞 2008年8月8日 21時37分(最終更新 8月8日 22時19分)