2008年08月08日

イントゥ・ザ・ワイルド

 例によって、有さんと試写会に行ってきた。 
『INTO THE WILD──イントゥ・ザ・ワイルド』。
 デ・ニーロの衣鉢を継ぐとも言われた名優ショーン・ペンによる、監督としての長編第3作とのこと。 
 原作は『荒野へ』(ジョン・クラカワー、集英社刊)というノンフィクションらしい。 
 実在の人物クリスは、優秀な成績で大学を卒業すると同時に、両親を棄て愛する妹にすら行方を告げず、旅に出る。 
 アメリカの中流層にはそういう習慣があるのか、事業で成功している父から預けられた学資預金の残高2万5千ドル余りを慈善団体に寄付し、クレジットカードにハサミを入れ、社会保険票らしきものも燃やす。 
 このへんは事実に即しているのだろうが、手持ちのドルまでをもライターで焼いてしまうあたり、いわゆる、鼻持ちならぬ自分探しの旅である。 
 当然、旅には現金は入り用なわけで、巨大な穀物畑での住み込み労働(楽しそうだ)や、ファーストフードでのアルバイトなどもする。見ている方としては、最初の学資預金があればと思うのだが、一軒幸福そうな家庭にも暗い過去があり、それとのケジメなのだったろうなと大目に見ることにする。 
 語り部は時に、兄を偲ぶ妹になるが、それとはシームレスに現在進行形のシナリオが進む。 
 エピソードにはどれもリアリティがあり、作り物めいてはいない。 
 主人公クリスが最終目的地のアラスカ(季節は冬の終わりから夏にかけて)にいるのが「現在」なわけだが、そこに至るまでの過程として、ロスアンゼルスに象徴される腐敗した現代社会や、ヒッピームーブメントの名残あるコミューンなどでのシーンが、カットバック形式で挿入される。 
 主人公を演じるエミール・ハーシュ(「スピード・レーサー」=マッハGo!Go!Go!)はもちろん、脇を固める俳優がみな素晴らしいのと、漫然とした自然描写にとどまることのないイマ風な映像の工夫、またオリジナルの美しい音楽のせいで、飽きるということはない。が、148分(つまり2時間28分)は確かに長丁場だ。 
 こんなアマちゃんでも、最後はとても大事な悟りを得る。それは、大人になる過程では自明のこととなる、ある原理である。 

 ショーン・ペンが、この題材を取り上げたのは、実の弟──いみじくも名前は主人公と同じクリス、を失ったことがきっかけであるという。 
 ヒッピーカルチャーの描写などから、少し旧い時代の映画かと思いそうになるが、実在した主人公は1968年生まれであるというから、おおむね現代の映画である(主人公より3歳上の私にとっては、だが)。 

 エミール・ハーシュファンの人へ ☆☆☆☆☆ 
 自分探しに興味がある人へ    ☆☆☆☆★ 
 アメリカの自然に興味がある人へ ☆☆☆★★
posted by TAKAGISM at 01:03| Comment(0) | 映画
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