昨日は家でレコードを聴いていました。週末に福岡で買ったサイモン&ガーファンクルの三枚のアルバム。「汚レコード」王子、こと小島泰生さんに案内して戴いた、とあるレコードショップの店内でずっとサイモン&ガーファンクルの紙ジャケCDが流れていて、ああ、聴いたことがない曲とか、ライヴテイクとか、けっこうあったんだなあ、なんて、耳が吸い寄せられてしまいました。

そして小島さんがお仕事に戻る直前、連れていってもらったのは、前日タクシーの中で見かけた、ちょっと気になる洋服屋さん。ショウウィンドウの中のトルソーが着ていたT-シャツは、ウディ・アレンの似顔絵のイラストレイション。チェックしに行くと、お店の名前は「BOOKENDS」といって、やはりサイモン&ガーファンクルのジャケットが飾られている。その上、レジのカウンターの棚には彼等の評伝らしき単行本もディスプレイしてあって。思わず、コレは売り物ですか? と尋ねてしまいました。

そして小島さんとお別れして、ひとりで行ったレコードショップには、やはりありました。すべてのアルバムが、国内盤で。CBSソニー・レーベルのダブル・ジャケットのシリーズが。

そうして昨日、買ったレコードを聴いていました。「水曜の朝、午前3時」という有名なタイトルのアルバム。このアルバムでの彼等は、まだ完全にフォーク・グループ、だったのですね。エヴァリー・ブラザーズにちょっと影響を受けた、フォーク・デュオ。それが「サウンド・オブ・サイレンス」そして「パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム」と、次第にフォーク・ロックのグループへ、そしてアルバム・アーティストへ、さらには時代を象徴する存在へ、と変貌していく、そんな3枚のアルバムを続けて聴くのは面白かったです。

毎日、いろいろな音楽を聴いています。30分前は手に入れたばかりの伊東ゆかりの「朝が来たら」というシングル盤を聴いていました。そしていまは、数年前にある親戚の結婚披露宴のために選んだBGMのCDを聴き返しています。一日中、音楽のことを考えて、仕事を離れてリラックスするときも、やっぱり音楽を聴く。コレってタフなことですよね。

ある知り合いの若いレコード屋さんが、この間の「レコード手帖。」アンケートの堀部さんの意見に噛み付いて、小西さんや堀部さんみたいにいままでさんざん「音楽を消費しつづけなければいけないような強迫観念を持つ、またはそれを他人に喧伝」してきた人が、手のひらを返したように、いまそういう事をしてる人を中傷するってどうなのよ、と言ってくれました。ストレイトなご意見、とても感謝してます。

自分はいままでそういう風に「喧伝」、平たくいうと、煽って来たのかな。まあ、頼むから今度のレコードを買ってください、聴かなくてもいいから、とか言ってたことはあります。でも、誰かに「え、コレ知らないのォ??」と言うときは、もちろん「こんなの知らなくても生きていけますよ」ってコトを前提に話していたのですけれどね。

戦争が起きたら、まっさきに切り捨てられるのは、たとえば音楽。そういうと、いや、人は苦しいときにこそ、心の潤いが欲しくなる、という意見をくれた人もいます。でも、忙しくなったり、結婚したり、子供が出来たりすると、いつの間にか忘れられてしまうのも、たとえば音楽かな、と思います。忘れるから、忘れないようにレコードを買うのかな、オレは。

音楽なんて、ゼイタク品だし、無駄なもの。そんなコトは確認するまでもない、大前提だと思ってました。だから音楽を仕事にしている彼やオレは、人生を無駄なことに懸けているわけです。それってカッコいい、って誰か言ってくれないかな。

だから、もう一度言います。これは小西康陽の意見。こんなに「音楽が人生に大切なモノ」、「ノー・ミュージックじゃノー・ライフだよ」なんて喧伝されているこの時代はオカシイです。それって嘘だよ、って誰かが言うべきです。自分にとって音楽は、本当にかけがえのない人生の宝物、と思っている人ほど、誰もが耳にイアフォンを突っ込んでお手軽に消費しているこの時代を呪っているハズです。

音楽に振り回されるのを、情報に振り回されるのを、誰かの意見に振り回されるのを、この夏は一度、止めてみたい。一休さん、ですかね。きょう聴かなきゃ時代に取り残されちゃう、そんな音楽を、あえて、きょう聴かないゼイタク。その時間、やっぱり音楽のことを考えるのでもいいし、人生のこと、彼女の言いたかったことを考えるのでもいい。誰かに、いま、何を聴いてるの? って訊かれたら、「サウンド・オブ・サイレンス」だよ、と答えるワケです。こんどは寂聴さん。大喜利だな、これじゃ。

そんな訳で、きょうも「レコード手帖。」はアンケート特集。最後の設問。何で「音楽アーティストのT-シャツ」、なの? と、いろいろな人に訊き返されましたけど。いや、楽しく答えて戴けるのでは、と考えまして。つまり、前半はけっこうへヴィな質問だ、と、コチラは考えていた、というコトですかね。TVを観ますか? という質問も同じく。あんまり深い理由はアリマセン。いちばん訊きたかったのは、「夏フェスに行ったことがありますか?」だったのですけれど、やっぱりストレイト過ぎるでしょう? いや、本当に皆様、ご協力有難うございます。では更新。あ、きょうは渋谷オルガンバーで「レコード番長」ですよ、などと。

(小西康陽)