2008年08月08日

インドでの代理出産の話(2)日記

(1)はこちら

報道の部分だけだとどうしても「元妻」が

・不妊治療や代理母出産について甘い認識で行い、いざ子供が生まれる段になって「やっぱり私の血が入っていない子どもなんか育てられない」と身勝手に逃げ出した

ゆえの離婚のようにしか読めないのだが、アクアマリンさんの話が同一事例で事実であれば、

・子供の血のつながり以前に、妻を騙す形で非合法な代理母出産と卵子提供を強行、その上母親偽装という犯罪まで犯させようとする
・最初から「子供の日本民法上の母」であることだけを期待し、妻の人格や心を一切認めず、子の養育者たることを目的に結婚した

夫から、一人の人間としての尊厳とこれからまだ長い人生を守るためには、離婚という緊急回避しか残されていなかったように見える。
人間として、逃げるべき状況だと思う。

あなたが男性ならば、この事例に関わった男女を逆転させ、「勝手に卵子提供→勝手に精子提供」と置き換えて考えてみてほしい。私にはとても彼女を責める気持ちにはなれない。
「代理出産の是非」以前に、かなり異常なケースであり、議論事例として採用するには不適格かとも思う。

もちろん最大の被害者は、未だに「母親となる人」が宙ぶらりんのままの子供であることは間違いないし、インド人の代理母もまた被害者だと思う。
報酬と長期間の束縛を比較して納得して契約したとはいっても、10か月間のつわり、胎動などを通じてともに過ごした胎児を、時に抱き上げもできずに取り上げられる(産後のスキンシップや授乳で母性が本格的に発動するためと言われている)喪失感に心を病む代理母の事例も少なくないと聞く。
それでも「きちんと育てる医師のある夫婦の元で大事に育てられる」と思えばこそその子別れの辛さにも耐えることができるのだろうに、大事に育んで生んだ挙句に「落ち着き先がない」というのは辛くないということはないように思われる。

離婚決意後のアクアマリンさんの書き込み(今のところこれで最後)

返信ありがとうございました。(5)
アクアマリン -- 2008年07月 4日 18:40:19

  みなさま

引続きのご意見・アドバイスをありがとうございました。
昨日、主人のもとから実家のある都会に移動が完了し、
一息つきました。

離婚届と同様に今回の事件の責任所在を明確にした誓約書に
署名させて来ました。ですが、出生後に私の氏名・戸籍を悪用
されることがどうしても心配
ですので、決定的なくさびを打ち込むべく、来週、法律の専門家に相談してきます。

主人も去ることながら、虚偽の出生証明書作成を提案している
この倫理観皆無のインドの病院と産婦人科医も信じられない
ため、万全の対応を目指したいと思います。

みなさまからの励ましのお言葉に勇気を頂きました。
後ろを振り返らず前進して行きます。


返信ありがとうございました。(6)
アクアマリン -- 2008年07月10日 19:22:00

  みなさま

引続きの離婚に関するアドバイスをありがとうございました。

実は今週、3人の弁護士と接触してみましたが、あまりに
話が特殊なことと、インドという外国も絡んでいることから
どの弁護士さんも腰が引いています。

もし、どなたかお勧めの弁護士さんをご存じの方が
いらっしゃいましたら、教えて下さい。

離婚は成立しているので、戸籍や出入国に詳しい方が
適しているのかもしれません。

よろしくお願い致します。


返信ありがとうございました。(7)
アクアマリン -- 2008年07月13日 08:46:02


ご親切なアドバイス大変参考になりました。
ありがとうございました。

離婚届は先週、正式に受理されました。

ただ、一度、虚偽の出生届をだされて受理されてしまうと、一旦は
戸籍に記載され、その後、家庭裁判所に申し立てをするという
ことらしいのですが、その場合、戸籍は訂正になり、記載前の
状態にはならないらしく、未然の防止が必須とのことでした。


この問題に長期に関わり続けることは本当に精神的にも体力的にも
限界なので何とかここ数週間で頑張りたいと思っています。

これから夏本番を迎えます。
みなさま、どうぞご自愛下さいませ。


一方ニュースの記事より。

 男性医師は子供を引き取る意向を示しているが、現在、ビザが切れて日本に帰国。男性医師の母親が現地で子供の世話をしている。

 卵子が元妻のものなのか、インド人女性のものなのかは明らかになっていない。男性医師は読売新聞の取材に子供がインドを出国できない状態にあることは認め、「今はどこまで話していいかわからない。子供を引き取れるよう弁護士に依頼している」と話している。

 インドでは代理出産に関する法律はなく、近年、商業的な代理出産が広まっているという。代理母には貧しい女性がなるケースが多く、65万〜162万円の金を手に入れることができるという。


朝日のほうだと「第三者の卵子提供」とはっきり書いている。

 現在、赤ちゃんがいる西部ジャイプールの病院などによると、愛媛県の40代の男性医師と妻はインド人女性と代理出産契約を結び、インドの不妊治療クリニックから第三者の卵子提供を受けて7月25日に女児が生まれた。夫婦は子どもが誕生する前の6月に離婚しており、元妻は女児の引き取りを拒否しているという。

 男性医師は赤ちゃんを引き取る意向で、女児はインドのパスポートを取得する方向で検討を始めた。女児は、男性の母親が現地で世話をしているという。

 男性医師によると、すでに代理母を母とする出生届をもらっている。日本大使館からインドでの養子縁組を求められたが、養子縁組を求める自分の名が出生届の父親欄にあるため、養子縁組は難しいと現地で言われたという。

 さらに、養子縁組については、インドでは独身男性は女子を養子にむかえられないという。ただ、病院側は「生物学的な父親なので、本来は養子縁組をする必要はない。インドで生まれたので、市民権を得て、インドのパスポートを取れるはず」と話す。

 女児の場合、かりにインドの市民権、パスポートを得て出国できても、すぐに日本国籍が得られるわけではない。インド人の代理母を母とする出生届を日本で出すだけでなく、父親が認知のための裁判手続きもする必要があるとみられる。

asahi.com(:インドで代理出産の赤ちゃん、夫婦離婚し帰国困難に - 社会


夫側も弁護士を立てているようなので、色々争う気は満満なのか。おそらくもう同じトピックにアクアマリンさんが来ることはないのだろうけども、この先長くこじれそうで人事ながらも気がかりになってくる。


私も不妊に悩み苦しむ身だが、後述の理由により自分たち夫婦で代理母出産を決行しようとは考えていない。
ただし、「そうまでして…」と言われがちな代理母出産だが、「そうまでしたい」気持ちも十分に分かるし、卵子提供や代理母という手段を選ぶ人を非難する気持ちもない。
そうした人たちにとっても、この事件は代理母出産認定の動きをせき止め、あるいは偏見と批判を助長する最悪のケースとなったのではないだろうか。

私が代理母出産を選択肢に入れない理由は、もちろん高額な費用や子供をめぐる倫理的な問題もあるけれども、第一に
「妊娠中や出産時のリスクをお金で第三者に肩代わりさせることはできない、万一の時に金銭で購いきれるものではない」
と強く思うからだ。

これは私が流産の時に文字通りあっという間に「命が危険な状況」に陥った経験からのもので、一連の産婦人科叩き報道にも見られるように、日本人は
「お産はめでたいもので、現代の医療技術なら危険はない」
「妊娠すればゴールも同然(特に不妊治療初心者に多い思い込み)」
「今時産中産後にそうそう死ぬものではない」
と思いこみ過ぎなのだけれども、確率が低くなったというだけで、今だって十分「妊娠・出産は命がけ」「いつ何があるか分からない」のだ。

流産やお産の途中で亡くなるのはもちろんのこと、私のように大量出血で輸血をすれば以後ずっと感染症のリスクは消えることはないし、帝王切開で開腹をすれば傷も残る。また、何回でも無尽蔵に切れるわけではないし、開腹以後1年間は妊娠は原則禁止となるため、その後の代理母の結婚や出産に大きな束縛を与えることも十分に考えられる。
インドでの代理母出産の相場が記事に書いてあり、おそらくアメリカなどで行えばもっともっと高くなるのだろうけども、少なくとも軽自動車一台程度の金銭で釣りあうリスクとは思えないのだ。


ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。
日本で法整備がまだまだである以前に、さまざまな問題や金銭で解決し切れないリスクやトラブルが代理母出産には絡んでくるということを初めてお知りになった方もおられるのではないでしょうか。
まだおおっぴらに認められていないとはいえ、「代理母」という方法が現実的にはすでに選択肢のうちとなり、色々な意味で認知度が上がってきているのをひしひしと感じます。
これからは、子供に恵まれずに悩む夫婦に
「いざとなれば代理母って手もあるじゃない」
という言葉が投げかけられる場面も増えてくることでしょう。

でも、費用の面だけでも、誰にでもできるようなことではありません(国内で可能な高度生殖治療にしたところで、保険が効かないためつねに患者はイッパイイッパイの経済状況を余儀なくされます)し、何より上記のような未解決、あるいは解決しようのない問題を多く内包している手段の一つです。
何もこちらの状況を知らない相手から
「なかなかできないなら病院行ってみれば?俺の知り合いも●●病院行ったら一発でさあ…」
と能天気に話しかけられるだけでも、(相手に悪気も何もないとは分かっていながら)、これ以上頑張れないほどの状況で「頑張ってみれば?」と言われるというのは非常に堪えるものです。
もしもお願いできるなら、ご自身が代理母容認派だとしても、気軽に
「代理母に頼めば?」
と言わないでほしい、そういう世の中にならないでほしい。
心からそう願っている一人です。
posted by 大道寺零(管理人) at 11:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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