二〇〇七年度の日本の食料自給率(カロリーベース)が十三年ぶりに上昇に転じた。農林水産省によると前年度を1ポイント上回って40%に回復したという。小さな変化だが、この流れを確かなものにして大幅な上昇につなげたい。
自給率を引き上げた要因としては、コメの消費拡大や国産野菜の人気の高まりなどが挙げられる。とりわけコメの消費量は、一人年間六一・四キロ(前年度六十一キロ)で十二年ぶりに伸びを記録した。さらに、国産小麦も北海道など主産地が天候に恵まれて生産量が九十一万トンと過去十年間で最高となったことも貢献した。
一九六五年度には73%を占めていた日本の食料自給率だが、食生活の欧米化によるコメ離れや、産業構造の変化による農業の衰退などで低下した。九三年度には37%まで落ち込み、その後40%台を維持していたが、〇六年度には再び40%を割り込んでいた。
待望の自給率回復だが、楽観できる状況ではない。コメの消費拡大は、輸入小麦の高騰に対する割安感という面が大きい。国産野菜の消費増も、中国製ギョーザ中毒事件などの影響で安全性を求めてのことだ。一時的な外部要因による「追い風」にほかならない。政府は一五年度までに食料自給率を45%まで回復させる目標を、さらに50%以上に高める考えというが、本格的な反転は容易でなかろう。
食料の六割を海外に依存し、先進国で最低水準とされる日本の現状は危うい限りだ。発展途上国の人口急増や、石油代替燃料としてのバイオ燃料用穀物の需要増大などで世界の食料需給は逼迫(ひっぱく)している。食の安全の問題に加え、輸出国の事情でいつ輸入が止まるか分からない不安定さから早く脱しなければならない。国産への消費者の関心が高まっている今こそ食料自給率向上を軌道に乗せたい。
食料自給率の大幅回復を実現するには、国産の消費拡大に一層力を入れるとともに日本農業の足腰を強くすることが不可欠だ。高齢化に伴う担い手不足で耕作放棄地が年々拡大する深刻な状況は、農政の力不足を示しているにほかならない。
先の世界貿易機関(WTO)新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の閣僚会合は、日本に対する国際的な自由化の圧力を痛感させた。会合は決裂したが、今後も市場開放を迫られることに変わりはなかろう。備えが急務である。意欲的な生産者が経営規模を拡大できるよう、農地の流動化策など国を挙げた大胆な改革が求められる。
経済連携協定(EPA)に基づくインドネシアからの介護福祉士候補と看護師候補の第一陣約二百人が七日、来日する。日本が海外から介護や看護の人材を本格的に受け入れるのは初めてである。
両国政府は五月に覚書を締結し、来日希望者と受け入れ先を募集した。来日する人々は岡山市の特別養護老人ホームなどを含む三十四都府県の施設や病院で働くことになっている。
日本は本年度、介護職と看護職計五百人を受け入れる予定だったが、結果的に四割にとどまった。インドネシアで一般的な男性の看護師の受け入れ先が少なかったことなどの影響とみられ、今後の募集方法などに課題を残したといえよう。
今回来日する人たちはいずれもインドネシアの看護師資格を持つが、当面は介護福祉士、看護師の候補者の立場だ。約半年間、日本語などの研修を受けた後、職場に散る。介護職員や看護師の助手として働きながら介護職は来日から四年、看護職は三年の間に日本の国家試験合格を目指すことになる。
試験合格は日本人にとっても簡単ではない。働きながら学ぶことから各職場のサポートが大切になろう。仕事の量などについて自治体や国のチェックも必要ではないか。
介護の現場では低賃金からくる人手不足の現実がある。外国人を安い労働力とみなしてはならない。今回来日する人たちのスムーズな受け入れと並行し、国は介護に携わる人々の処遇改善を急ぐべきだ。
職場としての魅力アップは日本人で資格を持つ人の就労を促すと同時に、外国人労働者の定着につながろう。介護などの人材受け入れはインドネシアからの第二陣のほかフィリピンからも予定されている。
(2008年8月7日掲載)