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夢の光、強度1億倍に 理研と阪大、大型鏡開発
大阪大学と理化学研究所は7日、極小の世界を観察できる「X線自由電子レーザー(XFEL)」の強度を1億倍にする集光鏡の開発に、世界で初めて成功したと発表した。XFELは科学技術の分野で待望されている“夢の光”で、タンパク質の立体構造の解明や創薬開発への応用が期待されている。今回の鏡の開発は、欧米との先陣争いを大きくリードする画期的な成果といえる。
研究成果は米科学誌「レビュー・オブ・サイエンティフィック・インスツルメンツ」に掲載され、8月に開かれる国際光工学会で発表される。
XFELは、電子を光速近くに加速して飛ばし、出てくるX線の波をそろえてレーザーにしたもの。現在兵庫県に発振装置が建設されており、平成22年の完成後は科学技術分野での幅広い応用が考えられている。
一方、XFELは非常に強度が強く波長が短いため、効率よく集光するには大型の集光鏡の開発が不可欠と考えられてきた。これまでの鏡では強度が足りず、表面の凹凸が大きすぎて超短波のレーザーをそのまま集めるのは困難だったからだ。
今回阪大の山内和人教授らのチームは、阪大が持つ超精密加工法と理化学研究所が持つ高精度の研削法を組み合わせた新しいシステムを開発して、シリコン板(長さ約40センチ、厚さ約3センチ、幅約5センチ)の表面を研磨。表面の凸凹は2ナノメートル(100万分の2ミリメートル)以下に抑え、XFELの照射に耐えられる原子レベルの精度を持つ大型集光鏡の作製に成功した。
将来的には2枚の集光鏡を使ってXFELを効率よく集めることで、XFELの強度を約1億倍にすることが可能になるという。山内教授は「日本が生んだ世界最高精度のものづくりで、科学技術の発展に大きく貢献できる」と話した。