東京都豊島区の下水道で5人が水に流された事故で、作業員たちがいた地点に一番近いマンホールは当時ふたが閉められていたことがわかった。地上に出るよう指示された作業員たちは当初、より遠いマンホールへ向かおうとしたという。警視庁は、工事関係者から事情を聴くなどして詳しい経緯を調べている。
調べなどでは、事故当日の5日、作業員6人がマンホールから下水道に入り、そこから約70メートル下流付近で作業をしていた。その約10メートル下流に次のマンホールがあった。
工事を請け負った竹中土木が都に説明したところでは、このうち下流側マンホールは交差点中央に位置しているため、車の通行に支障が出るとして、普段から資材搬入時以外は閉められていたという。午前11時50分ごろ、雨が強まったのに気づいた地上の作業員が下流側のマンホールを開け、大声で下の作業員に上がるよう指示した。ただ、その後、ふたを閉めたという。
6人は当初、上流側へはうように進もうとしたが、増水してきて進むのが困難なため下流側に変更したという。脱出した作業員は警視庁の調べに「急に胸の高さまで水が来た」と話している。
都への説明によると、地上の作業員は避難を指示してから約10分後、下流側マンホールの下から「開けてくれ」と声がするのに気付き、ふたを再び開けた。その時マンホールの壁に1人がしがみついていたが、この作業員は流されたという。
地上作業員は救出のため、さらに下流の数カ所のマンホールを次々開け、それぞれ縄ばしごを垂らした。その間、最初に開けたマンホールから1人が縄ばしごで地上に脱出したが、5人は流された。
指示のためいったん開けたふたを閉じ、避難に使わなかったことについて、都は「地上の作業員、下水道内の作業員とも、上流側に戻っても間に合うと思っていたが、予想以上に増水が急だったのではないか」としている。