九州大(福岡市)で開催予定だった国際学会「世界韓国学大会」が急きょ、韓国ソウルに開催地を移すことが分かった。中学校の新学習指導要領の解説書に竹島(韓国名・独島)を巡り「日韓の主張に相違がある」と記載されたことを受け、主管の韓国学中央研究院(韓国・城南市)が関係者に通知した。研究者からは「学術交流が政治問題に振り回されるのはおかしい」と憤る声が上がっている。
大会は政府系の同研究院や欧州韓国学会など7団体の共催で02年に開始。ほぼ2年おきに韓国の歴史や政治、産業など幅広く研究発表や討論をしてきた。第1回と第3回は韓国、第2回は中国であり、第4回は9月22~24日に二十数カ国計約200人の研究者が参加して、初めて日本で開かれる予定だった。
九州大は学内に「韓国研究センター」を設置し、07年秋から韓国・釜山大との共同授業を進めるなど日韓学術交流に力を入れてきたことから昨年11月、会場に選出されていた。
ところが今月4日、研究院から電子メールで突然、開催地変更を通告された。同センターの松原孝俊教授によると、メールには「独島問題で韓国と日本の間に予想できなかった乱気流が形成され、予定通り開催できなくなったことを心から残念に思う」とあった。大会は12月までにソウルで開かれるという。
基調講演者の一人だった小此木政夫・慶応大教授(現代韓国朝鮮論)は「学者は政治的対立の緩衝地帯となるべきだ。海外の研究者も竹島問題を認識しているが、ここまでくると不審に思うだろう」と懸念する。
大会で発表予定だった山口県立大の浅羽祐樹講師(韓国政治)は「韓国側では決定を出すのに激論が交わされ(変更を)好ましいと思っている人ばかりではないようだ。関係を一切断ち切るわけにもいかない」と、ソウルへ行く予定だ。【阿部周一、西脇真一】
2008年8月7日