「殺害予告」やオークション詐欺など、ネットが舞台の事件が連日摘発されている。対して一昔前のネットは、悪事が裁かれない無法地帯の感が強かった。
インターネットが普及する前は、パソコン通信が主流。利用者は電話回線を通じ、ある場所に設置されたホストコンピューターにパソコンを接続していた。危険な情報満載の国内の地下ネットも存在、クレジットカード番号や企業の内部情報などハッキングで盗んだ“成果”を半ば公然と仲間内でやり取りしていた。
現在、インターネットに接続している利用者を特定することは十分に可能だ。経由しているサーバーはほぼ追跡できるためで、実はネット社会は、現実社会よりも足跡が残りやすいとも言える。このことに気付いていないため、ネットの匿名性を過信して逮捕されるケースが後を絶たないのだが。
そこで考える。当時のあの悪意のハッカーらはどこに行ってしまったのだろう。ほとんど見かけない。ネット犯罪に対する法の整備が進んだため足を洗ったのか。それとももっと奥深いところで暗躍しているのだろうか。【高橋望】
毎日新聞 2008年8月7日 大阪夕刊