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「山本モナにみる悪女論」−打算のない「好色一代女」 (2/2ページ)
しかし少なくとも彼女は、「性」を利用して仕事を得ようとする芸能界の密かなる因習とは無縁のようだ。それどころか、自分を偽らない。不器用というか、「正直者は馬鹿を見る」の芸能界版だ。「悪女」なら、清純の仮面をつけて周囲にこび、裏で「大物」と結ばれているだろう。
男性社会において、しかるべき魅力と知力で上手に世渡りし、常に実力ある男性の心をつかんで自己実現のために利用するのが「悪女」だと、私は考えている。
時代も場所も異なるが、19世紀末の英国では、エドワード皇太子の元ロイヤル・ミストレス(王室公認の愛人)、リリー・ラングトリー夫人が、女優デビューを果たした。ちなみに皇太子も彼女も、交際時には配偶者がいたからダブル不倫だが、そんなことは芸能活動の妨げにはならなかった。
それどころか、皇太子の元愛人を一目見たいと、英国はもとより巡業先の米国でも、劇場はいつも満席。つまり本来はスキャンダルであるはずの事実を踏み台にして、彼女は芸能界でのし上がり、裕福なパトロンに不自由せず、かつ愛人関係終了後も、皇太子は後ろ盾であり続けた。そのため社交界も、彼女を無視できなかったのだ。リリーを快く思わなかった女性も多かっただろうが、階級社会でトップと結びついた者は強い。スキャンダルすら追い風にしてしまう。
しかし山本モナさんに、そのような打算はあるまい。彼女は要するに「平成版好色一代女」なのだ。
天真爛漫(らんまん)で恐いもの知らずの美女、しかも親しみやすい雰囲気があるので、当然、男性にモテるだろう。また彼女は1人にのめり込むタイプではないから、遊び相手が複数いても不思議ではないと思う。
それにしても、彼女のスキャンダル報道の過熱ぶりには首を傾げたくなる。タレントがプライベートな時間に何をしようと、犯罪でなければ、どうでもいいではないか。(まあ、為政者にとっては、年金、高齢者医療、ハコモノ無駄遣いなどの大問題から、しばし「愚民」の目をそらすのに都合が良いだろうが)
さて、山本モナさんから「スキャンダル」を取り去ったら、いったい何が残るのだろうか。いっそのこと、スキャンダルの女王キャラで居直る図太さを示して欲しい気もする。
(堀江珠喜・大阪府立大学教授)