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医学部がちょっぴり「広き門」に 定員削減方針を転換[教育動向] 渡辺敦司 2008/08/07 15:00:00
読者の中には、お子さんが医学部を目指している、あるいは将来、お子さんを医者にしたいと考えているかたもいらっしゃると思います。実はこれまで、医学部の定員は減らされる方向にあったのですが、政府は先頃閣議決定した「経済財政改革の基本方針2008」(骨太の方針08)で、この方針を正式に転換しました。これにより、ほんの少しですが医学部は「広き門」になりそうです。
その前に、医学部の定員の仕組みについて説明しておきましょう。医師の数は国民の健康的な生活はもとより社会保障費にも大きな影響を与えるため、国が需給動向を見通して増減を決める「計画養成」が行われています。現在、どの都道府県にも必ず大学医学部または医科大学があるのは、1973(昭和48)年に田中角栄内閣が打ち出した「一県一医科大学構想」によるもので、80年代前半に医学部の定員は約8,300人にまで増加しました。 しかしその後、医師の供給過剰という問題が起こり、82(昭和57)年の臨時行政調査会(臨調)答申とそれに基づく閣議決定を経て、86(昭和61)年には当時の厚生省と文部省が相次いで医学部定員の10%削減を打ち出しました。医療費抑制が課題となっていた97(平成9)年にも、これを念押しする形で、引き続き定員削減に取り組むことを閣議決定。2007(平成19)年度には7,600人余りにまで減っていました。 それが今は、連日ニュースで報道されているように、医師不足が深刻な問題となっています。昨年 5月に政府・与党は「緊急医師確保対策」をまとめ、医学部に地域の高校生を入学させる「地域枠」を設けるとともに、医学部定員の少ない県には定員増を認め、2009(平成21)年度までに最大395人の定員増を実施することにしました。ただしこの対策は、あくまで養成数の「前倒し」という扱いで、将来的な定員削減方針は維持したままでした。 今年の「骨太の方針」では、医学部定員を「早急に過去最大程度まで増員する」と明記しましたから、2008(平成20)年度の約7,800人と比べても、さらに約500人の定員増が恒常化されることになります。 しかしニュースなどでご存じのとおり、勤務医の労働環境は厳しさを増しており、社会保障費を抑制するかどうかについても大きな論議になっています。高収入だから、あるいは理数系の成績が良いから、といった単純な理由で医師を目指すとしたら、これからは大変かもしれません。しかも医療の現場では、高度化・専門化する知識や技術はもとより、患者とのコミュニケーションが取れる人材を求めています。勉強をがんばることももちろんですが、医療の世界や医師の仕事の実態も調べながら、自分がどんな医師を目指すのかを考えることも不可欠になっていると言えるでしょう。 <参考> 安心と希望の医療確保ビジョン(厚生労働省)
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