今度の内閣改造は福田康夫首相が自ら衆院を解散し、総選挙に挑む意思を示すものになる--と先週、書いた。だが、私の見立ては間違っていたようだ。内閣改造が済んでも、だれが、いつ解散するかは、依然として、もやもやしているからだ。
何しろ、福田首相が麻生太郎氏を自民党幹事長に起用したことで、「衆院選前に麻生氏に首相の座を譲る約束をしたのでは」という密約説までささやかれるほどだ。
本人たちが否定している通り、この時代、禅譲の密約など不可能だと思うが、多くの与党議員がしきりとこんな話をするのは事実なのだ。
「福田内閣の支持率が低迷したままなら、衆院選前に退陣し、自民党総裁選を行って麻生氏や小池百合子氏らが出馬して争ってはどうか」
もちろん、それも自民党の勝手なのかもしれない。でも、この交代論の狙いは次のようなところにあるようだ。
にぎやかな顔ぶれで総裁選をすれば連日、テレビや新聞が取り上げ、世間の関心を自民党に引きつけられるはずだ。そこで盛り上がったところで速やかに衆院解散・総選挙に打って出る……。
メディアも有権者も随分、なめられたものではないか。
話題性や一時的な人気だけではない。どの政党がどんな政策を提示するのか。それを口先だけでなく実行し、この国の政治をよくしてくれるのか。今、多くの有権者は、それを選挙の判断基準にしようとしていると私は信じる。
小手先で「変化」を演出するより先に、各党とも、まじめにマニフェスト作りを急いでいただこう。
毎日新聞 2008年8月7日 0時10分
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