東京を中心とする局地的豪雨で流れ込んだ雨水により下水道管の水位が急激に上昇し、作業員が流される事故があった。都市の水害は時と場所を問わない。何びとも油断はできない。
道路の地下を走る下水道管は、マンホールで地上に通じるほか、ほぼ閉鎖された空間である。工事中の作業員がいて管内が増水すれば逃げ場はなく、水に流されるままとなるのは避けられない。
東京都豊島区で起きた事故はその典型である。都内をはじめ関東地方で時間雨量五〇ミリを超える豪雨があった。現場の下水道管は合流式で、普段は汚水が流れ水深は浅いが、降雨の時は雨水が流れ込み、急に増水する。
逃げ場のない閉鎖空間で作業する時は、事故が起きると重大な結果になる。増水ではないが、愛知県半田市の下水管清掃現場で二〇〇二年三月、硫化水素が発生し、作業員五人が死亡する事故が発生している。
今回のような公共工事では発注者、元請け、下請け、孫請け企業と作業員全員が現場の状況、工法や気象情報に細心の注意をし、連絡を密にしないと事故は防げない。「注意報発令で工事中止」などと仕様書に定めても、関係者の連携がないと生かされない。
先日、神戸市灘区の市街地を流れる都賀(とが)川が雨で急に増水、川遊びの児童らが流される事故があったばかり。今度は下水道管の増水による犠牲だ。二〇〇〇年九月の東海豪雨以来、局地的豪雨が市街地を襲う都市型水害が注目されているが、それ以前も一九九九年六月、福岡市では浸水したビル地下飲食店の店員が水死している。
集中豪雨に見舞われても、表面をコンクリートとアスファルトで覆われた市街地は、雨水の逃げ場がない。都市河川、下水道、ビル地下、地下鉄施設、地下街のほか、思いもよらぬ場所が浸水の被害を受けることもあり得る。
下水道管事故現場近くに降ったのは急発達した積乱雲による雷を伴ういわばゲリラ豪雨だが、気象庁が大雨洪水警報を出したのは事故から一時間近く後のことである。局地的大雨の予報困難は同庁自身が認める。
気象情報に注意するのは当然だが、間に合わないこともある。平凡だが、降雨による浸水予測のハザードマップを基に、雲行きの怪しい時は危険個所から早く退く、作業はすぐ中止するなどの対策をきちょうめんに行うのが、安全の確保に一番大切なことだろう。
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