千葉県と兵庫県で中毒事件を起こした中国製冷凍ギョーザが、中国国内で製造元によって回収された後で再流通し、新たな中毒事件を引き起こしていたことが明らかになった。原因である殺虫剤「メタミドホス」が中国国内で混入されたことはほぼ確実になった。中国当局は早急に真相を明らかにすべきである。
日本で中毒事件が表面化した後で製造元の天洋食品(河北省)が回収した製品の一部が再び出回ったようだ。6月にそれを食べた複数の中国人が中毒症状を訴え、調査でメタミドホスが検出されたという。
食品の安全にかかわる問題で「二次災害」はあってはならないことである。再流通の経緯ははっきりしないが、天洋食品が回収した製品の全品検査を実施しなかった可能性は大きい。中毒の原因を解明し再発を防止する意欲が同社にあったのか、疑問を抱かざるを得ない。
管理体制がずさんだった可能性も否定できない。なぜ再流通したのかを中国当局は明らかにし、必要であれば天洋食品の経営陣の責任を厳しく問いただしてもらいたい。
日本での中毒事件を巡っては、警察庁が2月に「メタミドホスは日本国内で混入された可能性は極めて低い」とする捜査結果を中国公安省に伝えた。これに対し中国公安省は「中国国内での混入の可能性は極めて低い」と反論し、いわば「水掛け論」に陥っていた。
今回、日本に輸出されていないギョーザからメタミドホスが検出された結果、中国で混入されたことが決定的になった。誰がいつ、どうやって混入したのか、中国の捜査当局は早急に真相を究明し、その結果を内外に公表する必要がある。
中国で中毒事件が発生したとの情報は、7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)の直前に中国側が外交ルートを通じて日本側に伝えた。だが日本政府は「捜査中の事件」だとして公表していない。
「三次災害」の可能性が100%ないとの確信があったのだろうか。中国で暮らす日本人には「うっかり気づかないで食べていた可能性もあるのではないか」との不安もあるだろう。政府はこうした不安と疑問にきちんと答えなくてはならない。
両国の捜査当局は「水掛け論」の状態を脱し緊密な協力に踏み出すときである。再発防止に向け食品の安全を担当する部門の協力も重要である。北京五輪の開会式に出席するため8日に北京入りする福田康夫首相は、胡錦濤国家主席や温家宝首相との会談で強く主張してほしい。