厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会は6日、今年の地域別最低賃金引き上げ幅の目安を平均で時給15円程度と決めた。昨年より約1円多く、2年続けて二ケタの上げ幅となった。
今年は、一部地域で生活保護費を下回る問題の是正を求める改正最低賃金法が7月から施行された。6月末には、政府の「成長力底上げ戦略推進円卓会議」で、政労使が「高卒初任給」を目標に最低賃金を引き上げていくことで合意した。
これらを踏まえて、審議会で使用者、労働組合、学識経験者の代表が協議し、目安をまとめた。一昨年までの、前年比数円の上げ幅で決着する慣行は崩れた。従来は、中小零細企業の支払い能力を重視する形になっていた。昨年と今年の二ケタ引き上げによって、「労働者の生計費」にもバランスよく考慮する流れが一応できたといえる。
長い間、小刻みな引き上げだったため、日本の最低賃金の水準は先進諸国と比べて低くなり、最低賃金を下回る賃金で働く労働者はわずかだった。今後は、引き上げがじわじわと重みを増し、労使双方に影響が広がっていく見通しである。
2007年改定後の地域別最低賃金は全国平均で時給687円である。これに今回の全国平均の引き上げ額を足すと700円強となる。目安は経済状況に応じて四つの地域に分けて差をつけている。
生活保護の水準を下回る12の都道府県については、審議会は原則2年以内、特に事情のある地域には3年から5年程度で、生活保護との逆転を解消するように求めている。「高卒初任給」の水準に5年程度で引き上げるという円卓会議の合意は、15円程度の引き上げが続けば計算上達成できる見通しだ。
今回の目安はぎりぎり現実的な線で決着した。しかし国際的な金融不安、米国経済の悪化、原材料高などで、景気は下向いている。経済の低調な地域では、中小零細企業の経営環境が厳しさを増している。
働く人たちの安全網である最低賃金の引き上げは重要だが、ピッチが速すぎると地域によっては雇用に響く。中小零細企業の活性化策など、他の施策も併せて必要である。