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2008年8月7日

◎霞が関埋蔵金 「予算不足」を疑いたくなる・・・

 「増税などもってのほか。埋蔵金を使えばよい」。北國新聞政経懇話会で、元財務官僚 の高橋洋一東洋大教授が、改めて「霞が関埋蔵金」の存在を強調し、政府・与党の一部に根強くある増税論を批判した。これまで私たちがしてきた主張とまったく同じであり、大いに賛成である。

 霞が関には巨額の埋蔵金が眠っている。高橋教授によれば、〇五年の経済財政諮問会議 で洗い出した額は約四十六兆円に上る。〇九年度予算の概算要求で、社会保障費の伸びを二千二百億円削減することに批判が高まっているが、厚生労働省が持つ埋蔵金だけでも、削減分をはるかに超えるという。本当に「予算不足」なのか疑いたくもなる。

 自民党の麻生太郎幹事長が先ごろ、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化 目標を先延ばしする案を示した。財政健全化より景気対策が重要という麻生幹事長の認識は正しい。財政再建は安定した国民生活を構築するための手段であり、目的ではないからだ。二〇一一年度プライマリーバランスの黒字化達成が多少遅れてもそれほど困ることはないが、景気がこれ以上悪化すると深刻な事態に陥る。増税、景気悪化、歳入不足の「負の連鎖」は何としても避けねばならない。

 自民党町村派は先月、埋蔵金を利用すれば、今後四年間で五十七兆円の財源を確保でき るとする政策提言を行った。高橋教授も北國政経懇で、埋蔵金を使えば、増税なしでもプライマリーバランスの黒字化は可能と指摘したが、言っている意味は同じだろう。予算不足を理由にして増税を要求する前に、まず国民から取りすぎた税金を充当すべきだ。

 埋蔵金は一回切りのものだという指摘がある。安易に使ってはならないと言いたいのだ ろうが、だからといって官僚が使い道を決める特別会計に必要以上に残しておかねばならぬ理由はない。行政のスリム化に逆行し、新たな無駄を生む可能性もあるのではないか。

 巨額の埋蔵金を残したまま増税を求められても国民は納得しないだろう。財政再建を目 的化する愚を犯してはならない。

◎冷凍ギョーザに進展 疑念残さずが双方のため

 中国側が「中国国内での混入の可能性は極めて低い」と主張したため、日中間で見解が 対立していた中国製冷凍ギョーザ中毒事件に新たな進展があった。製造元の天洋食品(中国河北省)が事件後に中国国内で回収したギョーザが同国内で流通し、食べた中国人が有機リン系殺虫剤「メタミドホス」で中毒症状を起こしたことが分かり、中国側が外交ルートで日本に知らせてきたことが明らかになったのである。

 中国での中毒事件が起きたのは今年六月で、その後の調査でメタミドホスが検出された というが、被害者の人数や詳しい症状、どうして流通したのかは不明だそうだ。ただ、日本政府の対応に納得できない点がある。知らせてきたのが七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)の前であり、今になってそのことを明らかにしたのが日本側の関係筋だということである。

 日本側は外交ルートを通じ、中国側に事実関係の確認を要請する方針だそうだが、首相 周辺は「日本国内での混入の可能性が極めて低いと中国政府には伝えた。あとは中国がどう判断するかだ」と述べているという。どこか他人事めいた態度である。黒白をはっきりさせて疑念を残さないようにすることが日中双方のためになるとの考えで対応してもらいたい。

 昨年末から今年一月にかけて千葉、兵庫両県で三家族計十人が食後に中毒症状を訴えた 事例に関して日本の捜査当局はメタミドホスが日本で製造されたものでないことを突き止めたほか、混入していたメタミドホスが袋の外側から内部へ浸透するようなことがあり得ないとの実験結果を出した。それらは今年二月、警察庁から中国公安省に伝えられたのである。

 このとき、中国公安省は記者会見で中国での混入を否定する見解を発表した。日本側の 捜査結果を受け入れないものだった。それが新事実でひっくり返ったともいえるのだ。中国側は北京五輪後に捜査を本格化させるそうだが、日本政府は事実関係を明らかにするよう積極的に中国政府に働きかけねばなるまい。


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