「若者に伝えたい 韓国の歴史-共同の歴史認識に向けて-」
このたび標記の歴史入門書が出版されました。原文は韓国語であり本書はその日本語版です。著者は韓国の歴史学者、李 元淳氏、鄭在貞氏、徐 毅植氏の3氏であり、3人による共同執筆という形式をとっています。訳者は君島 和彦氏(東京学芸大学教授)。
副題が「共同の歴史認識」とありますように、日韓両国が同じ歴史認識を持つ日の到来を望みながら、そこへ向けて歩んでいこうという意図のもとに執筆され編纂されました。現状では日韓の歴史認識には、両国でなお大きな隔たりがあるといえましょう。日本側は、韓国側が日本との交渉の歴史をどのように理解しているのか、真摯に受け止めなければならないと思います。
わたくしは本書の発刊に際しまして、日韓司教交流会日本側窓口の司教として一言申し述べたいと存じます。と申しますのは、韓日司教交流会韓国代表 姜禹一司教様の発刊の辞にありますように、本書の編纂・出版は、「日韓司教交流会」と切り離すことのできないものだからです。
「日韓司教交流会」は本年、すなわち2004年で10回目を迎えます。第1回は1996年、「日韓教科書問題懇談会」という名称で、日韓の有志数名の司教達により東京で行われました。この名の示すとおり、日韓の歴史教科書問題について話し合い、できれば共通の歴史教科書の作成へ到達したいという遠大な目標を設定いたしました。
回を重ねるしたがって、参加司教の数も増え、「日韓司教交流会」として司教同士の交流会という性格が加わってきましたが、毎回の交流会では歴史問題についての勉強会を続け、歴史問題に取り組もうという意図は堅持しています。
いつか共同で共通の歴史入門書を編纂することができれば素晴らしいのですが、現在の段階ではまだ遠い道のりです。
しかし、韓国側で「若者に伝えたい韓国の歴史―共同の歴史認識に向けて―」を発刊してくださったことは、共通の歴史認識への大きな前進であり、こころから歓迎するものです。
なおさらに付け加えるならば、両国の歴史教育の間に大きな懸隔が存在するように思います。歴史認識の問題だけではありません。日本の中・高等学校で韓国とのかかわりについて教えているその分量が相対的に非常に少ないのです。わたしたちは自分と深いかかわりのある隣国の歴史をもっとよく理解すべきではないでしょうか。
多くの日本人がこの本を読んで韓国の歴史と韓国の方たちの歴史認識への理解を深めるよう切望します。
2004年11月18日
日本カトリック司教協議会
日韓司教交流会日本側窓口 岡田 武夫
(11.30)
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