消防法改正視野に救急問題解決の議論開始
【関連記事】 消防庁は8月6日、救急患者の搬送困難の問題を解消するため、消防法の改正も視野に、メディカルコントロール(MC)協議会の法的位置付けを強化するための議論を開始した。MC作業部会(座長=横田順一朗・市立堺病院副院長)の今年度の初会合を開催。7月25日に増田寛也総務相が、消防機関と医療機関の連携強化の方針を打ち出したことを受け、以前から設置根拠が弱いために活動しにくいなどの問題が指摘されていたMC協議会のてこ入れを図る。具体的にどう法改正に踏み込むかについて議論し、9月19日に予定されている救急業務高度化推進検討会に方向性を示す予定だ。
トリアージの運用に向け議論開始−消防庁
MC協議会の設置根拠を強化へ
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救急受け入れ「ベッドがない」(1)〜特集・救急医療現場の悲鳴
総務相は7月25日に、救急患者の搬送困難問題の解消に向け、消防機関と医療機関の連携を強化して搬送に関する連絡の徹底を図るなどの考えを表明。省内に議論の場を設置し、消防法の改正も視野に検討していくとの方針を打ち出していた。この議論の受け皿になったのが、同庁の救急業務高度化推進検討会の下部組織のMC作業部会だ。同作業部会は昨年度に設置され、救急救命士の再教育の見直しなどについて議論してきた。
MC協議会は、2001年度に出された救急救助課長通知が設置根拠で、全国に47の都道府県MC協議会と248の地域MC協議会がある。救急救命士への指導・助言体制の構築や、救急隊員の病院実習の調整などが役割だが、地域MC協議会は、二次医療圏ごとに設置されているもののほか、都道府県MC協議会と兼ねているものもあるなど、各地域によって体制が異なっている。
MC協議会をめぐっては、救急業務高度化推進検討会の下部組織の「消防機関と医療機関の連携に関する作業部会」が昨年度に、MC協議会を救急搬送の検証の場とすることを提案していた。しかし、MC作業部会から「課長通知が設置根拠であるMC協議会が担うには荷が重い」「地域によって活動に差があり難しい」などの声が上がったため、5月23日の検討会で、MC協議会の法的位置付けの強化に着手することを決定。具体的な検討をMC作業部会に指示していた。
■所掌事務の拡大も議論
こうしたことを背景に、今年度の作業部会では、▽MC協議会の所掌事務の拡大▽MC協議会の法的、行政的な位置付けの在り方▽救急業務の法的位置付けの見直し▽救急業務をめぐる法的リスクの問題―について検討する。9月19日の救急業務高度化推進検討会の開催前にもう一度会合を開き、方向性を示す予定だが、具体的にどう法改正などに踏み込むかは今後の議論次第としている。
会合の中で、橋本雄太郎委員(杏林大総合政策学部教授)は、救急救命士の業務の法的位置付けが、現状は「業務」ではなく「緊急避難」的なものであるとして、そこを整理しないままMC協議会の所掌事務の拡大についての議論を進めることに疑問を呈した。
鶴巻良男委員(新潟市消防局救急課長)の代理として出席した伊川章氏(同課長補佐)は、MC協議会の所掌事務の拡大に賛意を示し、「医師不足が原因で遠方からの搬送があり、地域だけでは搬送が終了しない事態が発生している。市の医療対策会議だけでは問題が解決しないため、幅広い構成員から成るMC協議会で問題を共有し、議論してほしい」と述べた。
熊田清文委員(愛知県防災局消防保安課長)は「MC協議会は救急救命士と医師が対等に議論するにはいい場。設置については法律的に整備し、細かい内容については政省令などで規定してほしい」と要望した。このほか、MC協議会に属する医師が作成した救急搬送のプロトコルに救急救命士が従って、損害が発生した場合の法的責任の問題などが議論された。
更新:2008/08/06 19:01 キャリアブレイン
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