松下電器産業 常務取締役 鹿島氏が講演
松下幸之助の精神を生かした内部統制対応を実現
2008/08/05
プロティビティ ジャパンは8月5日、プライベートセミナー「コーポレートガバナンスセミナーシリーズ6」を開催。基調講演では松下電器産業 常務取締役 鹿島幾三郎氏が「松下電器産業株式会社における全社的リスクマネジメントの取り組み」と題した講演を行った。
米国SOX法適用に伴い、問題点を洗い出し
松下電器は連結対象会社555社で、2007年度の売上高は9兆689億円、営業利益は5195億円、従業員数30万5828人に上る。また海外の売上比率はちょうど50%だという。その松下はNY証券取引所に上場していることから、2006年4月から米国SOX法の適用対象となった。
それに伴い、同社が2005年に外部監査人に評価を依頼したところ、「リスクマネジメントを統合する機能がなく、本社職能・委員会は個別に事業ドメインを支援」「事業ドメインごとに独自のリスク管理・評価を実施し、整合性がない」「リスクマネジメントの取り組みと事業経営が一体になっていない」という点を指摘されたという。その結果、「米国SOX法に則ったリスク情報の収集経路が明確には確立されておらず、全社共通の基準に基づく一元的・網羅的なリスクアセスメントができていない」という課題が明らかになった。
リスクマネジメントとは「事業を成功に導く“経営の手段”」である
鹿島氏によると、そもそも松下電器のリスクマネジメント発想の根本には、創業者の松下幸之助氏のそれがあるという。幸之助氏のリスクマネジメント発想とは「失敗の原因はわれにあり」「先憂後楽の発想=指導者の条件」「変化の予兆の敏感な把握と対応」の3点だ。
「失敗の原因はわれにあり」とは、事業の失敗を他責にするか失敗から学ぶかの違いで、他人の責任にする者は失敗の原因に気付かないというもの。幸之助氏は「キチンと経営すれば、絶対に成功する」と常々考えていたという。
「先憂後楽の発想」とは、事業の将来を運命に委ねるか自らコントロールするかの違い。事後対応をしていると、被害者意識が芽生えやすく、リスクに弱い企業体質になりやすい。一方、自ら積極的にコントロールしようとすれば、リスクに強い企業体質になっていくというもの。「変化の予兆の敏感な把握と対応」は、物事には必ず“きざし”が存在し、そのきざしを敏感に感じ取ることが他人を一歩先んじるポイントになるという考えだ。
同社ではこの考えを基に松下流のリスクマネジメントを立案。リスクマネジメントを「事業を成功に導く“経営の手段”である」と位置付けた。具体的には、「戦略の阻害要因に対応し、実現する」「環境の変化から生ずるリスク(変動要因)へ対応する」「リスクの背後の構造的なリスクと根本原因を明らかにし、手を打つ」という3つの戦略を立てた。
これに伴い、リスクマネジメント委員会の委員長を社長に変更。経理・財務担当役員や企画担当役員、情報システム担当役員など11人による委員会を設置。その下に事業ドメイン会社や地域統括会社の委員会からの情報が上がってくるようにしたという。
本年度は地震や大規模火災などを「重点モニタリング」に選定
実際のリスクには、地震や台風、テロなどの「災害・事故リスク」、戦争や企業脅迫などの「政治・経済・社会リスク」、リコールや知財権侵害、独禁法違反などの「オペレーションリスク」などを定めた。
そして、それらのリスクの選定基準を設けて選定を行ったという。評価基準は、「影響度・発生可能性評価が大きなもの」や「全社的に対策が不十分なリスク」「社内の複数の組織に関連するリスク」などを選定した。影響度評価は、100億円以上の損害が想定されるものを「極大」、10億円以上100億円未満を「大」、10億円未満を「中」とした。発生可能性評価では、1年に1回以上起きそうなものを「高」、10年に1回以上〜1年に1回未満を「中」に、10年に1回未満を「低」とした。
鹿島氏によると、「主に33項目のリスクを選定し、その中からさらに重要と思われるものを『重点モニタリング項目』として、注意していくことにした。今年であれば、地震や大規模火災を重点モニタリング項目に選定した」という。
そして最後には、「リスクマネジメントに完成形はない。常に改良していくことが重要だ。基本的にリスクマネジメントは、会社の文化や風土によって異なってくるはずだ。一般的なものを導入しただけではダメだ。当社では松下幸之助のDNAを基本としている。そして、リスクマネジメントだけでは形骸化してしまう。経営と一体となった取り組みが不可欠だ。つまり、“リスクマネジメントとは経営そのものだ”という認識を経営陣が強く持つ必要がある」と語り、講演を締めくくった。
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