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新しい流れ

2008年8月6日

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 米国経済は辛うじて2四半期連続のマイナス成長を免れたが、住宅市況は下がり続け、資産担保証券を抱える金融機関の苦境も一層深まる方向にある。信用収縮の影響は消費者だけでなく企業活動にも及びつつある。こうした事態は人々の社会への信頼感をどれほど傷つけたことだろうか。その原因についても多くの人々が気付く時期に来ている。まず金融に携わるプロの人々への信頼は実体でなかったということだろう。金融には人間のもつ可能性を時間的にも空間的にも広げる力がある。例えば貸し出しは、人々の自律的な向上心が仕事において実を結ぶまでの間、その力を貸す仕事である。

 だから、「相手を吟味し、限度を心得て支える」配慮は不可欠である。その仕事の担い手はその「限度を心得る」ことにおいてプロでなければならず、それが預金者や社会からの信頼の中身だと思われる。しかし、今や「限度を心得る」という原点は見失われ、金融がもつ拡張作用を徹底して利益を拡大することに偏り、歯止めが利かなくなった。特に過剰な流動性や余資がファンドによって組織化された今では、金融は災いを加速する要因とさえなってきた。

 重要なことは、規制もさることながら、やはり金融のプロが職業倫理の水準を思い切って引き上げ、その信頼を回復することだろう。利益さえ出ればよいという時代の流れを考えると、それは困難過ぎるというあきらめもあるが、そうではあるまい。自利だけでなく、他に尽くすことを喜びとする「良い心」あってこその金融であり、企業経営である。そう思う人が増え、新しい流れとなることは、社会や経済に正気が戻る大切な出発点だろう。(瞬)

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