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【主張】ODA汚職 公正さをゆがめる取引だ
現地の高官にリベートを渡さなければ、事業を受注できないという、海外での「あしき商慣行」を突き崩す契機にしなければならない。
ベトナムでの政府開発援助(ODA)にからむ汚職事件で、東京地検特捜部は、ホーチミン市の局長級幹部に約9000万円のわいろを贈っていた建設コンサルタント大手の「パシフィックコンサルタンツインターナショナル」(PCI)の前社長ら幹部4人を不正競争防止法違反容疑で逮捕し、強制捜査に乗り出した。
ODAをめぐっては、以前から公然とわいろ工作が行われていると指摘されていたが、捜査当局が海外での金品授受を摘発したのは初めてで、その意義は大きい。特捜部には、途上国へのODA事業に対し、日本企業がどのような工作を行っているのか、その実態を徹底的に解明してもらいたい。
事件の舞台は、ホーチミン市内の高速道路建設事業で、PCIはこのうちの約30億円のコンサルタント業務を受注した。
その際、受注業務に強い権限を持つとされる同市の局長級幹部からリベート提供の要求があり、PCIの前社長らは、受注への見返りとして巨額の現金を提供した疑いが持たれている。
外国の公務員への贈賄については、平成9年に日本を含む経済協力開発機構(OECD)加盟国などが防止条約を締結し、日本もそれに伴い不正競争防止法を改正、国内の法を整備した。
ところが、日本の捜査当局が同法を適用し立件したのは福岡区検が昨年、フィリピン高官2人にゴルフセットを贈った九電工元幹部らを略式起訴(罰金刑)した1件だけである。
米国はすでに100件以上を摘発している。このため、OECDは「日本は外国への贈賄工作を野放しにしている」と強く批判し、摘発強化を勧告していた。
今回の捜査は、このような国際的要請に応える観点からも必要かつ不可欠だった。公正さと透明性ある取引が求められる。
PCI事件を機に、企業側も意識を改革しなければならない。受注の見返りに金品を提供する商習慣との決別が大事だ。外国政府高官へのわいろ提供は、結果的にその国の腐敗を助長し、ひいては日本の国際的信頼も大きく失墜させる。外務省など政府機関の厳正なチェックもより大切である。