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「隠れた軍国主義者」になっていませんか?、戦争を直視しよう

紅下和樹2008/08/05
戦争体験を持つ人たちは、まもなく本当にいなくなります。その時に、あなたは自信を持って平和を守れるでしょうか。真に戦争を嫌う者は、戦争を直視しようとするものです。
日本 平和 NA_テーマ2

 今年も終戦の8月がやってきました。毎年、メディアは終戦関連の特集記事を組み、日本国民は平和への想いを確認します。しかし、最近気になるのは、平和主義者とは名ばかりの、無関心派が増えていることです。

 本当に平和を希求するのなら、現実的な平和運動を提言してこそ意味があります。国際紛争を解説した記事すら読みたくないと言う日本人は多いのかも知れません。しかし、戦争の実態を知ろうとせずに、「戦争を避けられるのか。平和を守れるのか」と私は強く危惧しています。

 私が学生だった時、級友に「戦争には絶対反対」だと言う者がいました。「戦争は間違っている」と確信に満ちた口調で言う彼でしたが、私がちょっと戦争について説明しただけで、すぐに「勝てる戦争ならやってもいい」と意見を翻しました。別の者は「戦争に関する事柄を知ると、自分が戦争を好きになってしまうのではないかと心配だ」という不安を口にしました。

 私は、こんな人たちには、そもそも平和を守る資質がないのだと思うのです。彼らは、元々、戦争が好きで、少し刺激を与えてやると、簡単に軍国主義者に変身してしまう性質を隠し持っているのです。

 真に戦争を嫌う者は、戦争を直視しようとするものです。そうしなければ戦争を防ぐことはできないと知っているからです。具体的に調査を行い、問題点を洗い出そうとします。クラスター爆弾禁止条約に関して、日本政府は当初、合意に反対していましたが、このことが国民的な関心を呼ぶことはありませんでした。

 この条約について考える時、クラスター爆弾という兵器の特質、運用の実態について知ることが不可欠です。しかし、戦争について知るのも嫌だという人たちにとっては、考えたくもないことでしょう。これでは、平和への試みに参加することはできません。

 この問題を、政界きっての軍事通として知られる石破茂氏について考えてみます。先週の内閣改造で、留任を要請されたにも関わらず、石破氏は「イージス艦事故の責任を取る」として、これを堅く固辞しました。私は石破氏は戦争について、とんでもない勘違いをしていると考えます。おそらく、石破氏の考えは「国民を守る自衛隊が国民の命を奪ったのだから、担当大臣が辞めるのは当然」というところにあるのでしょう。

 しかし、これは戦争の実態を無視した感傷論に過ぎません。南太平洋の島々、沖縄において、旧日本軍は軍民一体の戦争を行い、多数の犠牲者を出しました。朝鮮戦争において、韓国軍が韓国国民を殺した事例はいくつもあります。米軍はアフガニスタンでクラスター爆弾を多用し、使用を中止するまでの間に、この国の人びとに多くの犠牲者を出しました。米軍は原子爆弾の起爆実験で、米軍の隊員多数を被爆させ、冷戦中には化学剤にも被爆させる実験を行いました。

 国防が個々の国民を守るという見解は幻想に過ぎません。国防は一部の国民に犠牲を強いて、全体を守るという全体主義的な運動です。防衛省は「国民を守る」ことを協調します。これはその立場上、当然の主張です。もちろん、自衛隊は国民に被害を及ぼさないように最大限の配慮をするでしょう。しかし、国民の側は、これを額面どおりに受け取るべきではありません。日本国内で防衛戦を展開することの意味を間違えてはいけません。どう注意したところで、コラテラルダメージ(攻撃の意図とは別に起こる付帯的な被害のこと)は避けられないものだからです。国民の代表である防衛大臣が認識違いをしているのなら、国民がそれを彼に教えてあげなければなりません。

 こうした勘違いは、有事の際に有害な問題を引き起こすという、別の現実的な危険もあります。「自衛隊が国民を守る」という宣伝が繰り返されると、国民は「有事の際には自衛隊に守ってもらう」と考えるようになります。また、国民は自然災害の際に、自衛隊が災害派遣で出動し、被災者を助ける光景を見慣れています。こうしたことから、有事の際に自衛隊がいる方向に向けて逃げていく国民が生まれる恐れがあるのです。

 ジュネーブ条約には、民間人の被害を最小限にするために、軍隊と民間人をできるだけ分離させるという規定があります。自衛隊は敵にとっては攻撃目標です。その近くにいれば巻き添えになる恐れがあります。だから国際条約では、軍民分離の原則を掲げているのです。しかし、防衛省が「有事の際には、自衛隊からできるだけ離れるようにしてください」という注意事項を広く宣伝したことはありません。

 戦争を考える上では、こうした細かい事実について知らないと、正しい判断はできません。だから、少しでも多くの人に関心を持ってもらい、正しい知識を持つ国民を増やさなければならないのです。まして、戦争がもたらす衝撃は甚大で、その人の人生を一変させるほどの力を持っています。単に、机上の理論に詳しいだけでなく、そうした極限的な状況でも判断を誤らない人が必要なのです。

 残念なことに、軍事に関する普及本はあまりありません。日本には、様々な軍事に関するメディアが存在します。武器を中心に解説する月刊誌がその中心です。こうした軍事メディアは、戦争を考える上ではほとんど役に立ちません。情報が細かすぎて、利用しにくいのです。これらは軍装品や武器に対する関心をかきたてるものではあっても、戦争全般を網羅しているわけではありません。

 もっと率直に言えば、軍事メディアの多くは「軍事オタク」御用達でしかないのです。定期刊行誌としては、戦争のあらゆる面を網羅する本は存在せず、多くは右と左のイデオロギーに基づいていたり、前述のような軍事マニアのために出版されるものばかりです。このため戦争を学ぶためには、様々な分野の本を読み渡して、知識を組み立てていくという苦労が必要です。

 戦争体験を持つ人たちは、まもなく本当にいなくなります。その時に、あなたは自信を持って平和を守れるでしょうか。あなたは簡単に変節する、隠れた軍国主義者になってはいませんか。今月、ぜひ、こうしたことについて考えてみてください。

ご意見板

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[36163] 自分の気に入らない意見は平気で削除するJANJAN編集部2
名前:新井秦基
日時:2008/08/06 06:14
#36150の再掲です

>村山元首相、ただ1人を例にあげて、「かって平和主義者が国民を見殺しにした」と言うのは、論理の飛躍というものです。



これも先のコメントと同じロジックが使用できますね。
自分達の信奉するイデオロギーに関しては、「あいつは例外。一人だけ。あいつが悪かっただけ」
じゃあ、当時の村山首相に対して「自衛隊を即座に出して救助すべきだ」と主張した社会党議員はいたんですか?
「国民が苦しんでいても、違法な存在である自衛隊を災害救助に向かわせるべきではない。軍隊は国民を守ると思わせてはならない」
そんなことを主張した議員がいたんじゃないですか


何?
証拠を出せ?
政府がわざわざそんな都合の悪い証拠を残すはずはないじゃないですか(棒読み)
権力者が自分に都合の悪いことを残すはずはありませんよね(棒読み)
むしろ、そういう考えを持っていなかったと政府やネットサヨクの皆さんが立証すべきではないですか(棒読み)
司法試験指導で有名な護憲派のアイドル伊藤真氏によれば、「政府の愚作に関しては立証責任の転換を図るべき」だそうです



>「平和主義者」と言うからには、「平和主義者」の定義をわかりやすく説明して意見を述べるべきです。


平和・護憲・人権・平等・共生・反戦・非軍事というあたかも普遍的な概念を掲げながらも、実態は普遍的でない偏った中身を主張している人たちです。


政党で言うと、社民党・共産党。
それと、民主党内の旧社会党系の議員。
更に自民党内のリベラル派ですね。


朝日新聞を好み、あるいは朝日新聞の「右傾化」に失望して東京新聞に乗り換える。
週刊金曜日を定期購読している。
筑紫哲也、小田実、大江健三郎あたりを好む。
特徴としてはこんな感じでしょうか。


「実態は普遍的でない偏った中身」をもう少し具体的に説明してみましょう。


米海軍が日本に寄港すると「平和団体」の抗議デモが展開されますが、中国海軍が寄港するとデモはありません。
朝日新聞などは社説で「大歓迎」とまでいっていました。
これでは普遍的な「反戦・平和・非軍事」ではありません。


北朝鮮がテポドンというミサイルを発射すると、「あれは人工衛星なので問題ない」と北朝鮮の主張をそのまま広めた某左翼政治家がいました。
じゃあ日本のミサイルや米軍のミサイルを人工衛星という名目にすれば問題ないですか?
そんなはずはありません。
猛烈に抗議するでしょう。
これも普遍的な「反戦・平和・非軍事」とは言えません。


人権という観点から従軍慰安婦の問題を追及し続ける人たちがいます。
彼らは「日本が強制連行していない証拠を出してみろ」と主張します。
しかし、北朝鮮の拉致問題ではどのような態度を彼らはとっていたでしょうか。
「共和国が拉致したという証拠を出してみろ。出せないなら共和国に対する侮辱だ」と主張していました。
日本が加害者であっても被害者であっても、日本が自分で立証しなければならないようです。
どちらも人権が関わる問題なのに、態度が異なりますね。
従ってこれも全然普遍的ではありません。


中国共産党によるチベット弾圧が起きたとき、「国境は時代遅れだ。ボーダーレスだ。世界平和だ」と主張していた人たちはどうしていたか。
社民党も共産党も、随分と時間が経ってから渋々抗議声明というか遺憾の意を表明したに過ぎませんでした。
新社会党に至っては「アイヌ問題を抱えている日本人が中国を批判する資格はない」と、電話で問い合わせた私に逆切れしていました。
また、どの政党も「何が起きているか実態が掴めないので」声明を出せないでいると弁解していました。
じゃあ、実態を掴むべく動いているのかという私の質問に対して、「特に動いていないし、ああいう国なので調査には限界がある」とのことでした。
ボーダーレスな人権を唱えている人たちは、どうやら一方通行のボーダーレスを掲げているようです。
外国が日本を批判をするときはボーダーレス。
日本が外国(というか特に共産主義国家)を批判するときは、都合よく国境がでてくる。
こういうのをボーダーレスとは言いません。


今回の論争の種となった「平和主義者が国民を殺した」という私のテーマに関しては、直接上記例とリンクするわけではありませんが、極端な「平和主義者」たちの矛盾や問題点を浮き彫りにさせるという点で、非常に近いものがあります。


戦争は人殺しの手段だ
だから軍隊はよくない
軍隊が国民を守るという間違った理解をさせてはならない
従って国民を災害救助する場合にも軍隊を出すべきではない
救助できずに死者が出ても出動させるべきではない


あれ?
なんかおかしくありませんか?
本来は「人の命を尊ぶ」というのが究極目的であるはずなのに、手段に過ぎない「軍隊否定」というイデオロギーが目的化してしまったために、結果的に「人の命を尊ぶ」という本来の目的が果たせていません。


平和主義者も軍国主義者も、極端に走れば結果は同じです。




>例えば、自衛隊は憲法違反の存在であると信じている人から見れば、災害救助活動であっても、自衛隊が活動することに反対するでしょう。
>この意見があることは認めなければなりません。


別にその意見自体は否定していませんが(逆に同意もしませんが)、それが目的化しちゃってるのは本末転倒ではないかということを私はいいたいわけです。
[返信する]
[36162] 自分が気に入らない意見は平気で削除するJANJAN編集部
名前:新井秦基
日時:2008/08/06 06:12
#36149の再掲です

>村山は能力の無い政治家だっただけの話ですよ。
>あれほど国民に迷惑をかけた政治家は見たこと無い。
>結果 社会党は解散状態じゃないですか。


「村山は能力がなかっただけだ。だから平和主義とは関係ない。左翼イデオロギーの間違いを証明する根拠にはならない」

これが言えるならば

「東条英機は能力がなかっただけだ。だから軍国主義とは関係ない。右翼イデオロギーの間違いを証明する根拠にはならない」

も言えます。


左翼の皆さんはよく「反省しろ反省しろ」と言いますが、何故か自分達は絶対に反省せずにイデオロギーに固執するんですよね。
例えば、ソヴィエトが崩壊したとき、「あれは本当の共産主義じゃない」と間違いを認めない左翼ばかりでした。
「自分達のイデオロギーが間違っていたのではなく、あいつが馬鹿だっただけ」と一人に責任を押し付けて、自分達は責任逃れをする。
一方で、自分達と対立するイデオロギーに関しては、どこまでも責任追及し続けます。
「従軍慰安婦の強制連行の有無は関係ない。広義で関与してるんだから問題だ」と、当初の主張を拡大して、どこまでも責任追及する。
こういうのをダブルスタンダードと言います。
[返信する]
[36152] 昔は社会党に投票していましたが・・・
名前:忍野タカユキ
日時:2008/08/05 22:49
>自衛隊は憲法違反の存在であると信じている人から見れば、災害救助活動であっても、自衛隊が活動することに反対するでしょう。<

でも村山首相(当時)はその任期中に、自衛隊の観艦式等に正装でのぞみました。
自衛隊の存在を認めていなかった社会党に依存していた平和主義はこの時に社会党に失望しました。
しかも、その後、政権離脱したらいけしゃあしゃあと自衛隊批判しているのはどういうことでしょうか?村山元首相は除名されましたっけ?

それまでの『反自民』の姿勢を支持していた人を裏切って自民党と連立した日本社会党。その連立の後遺症によって支持が激減し国会議員数がじり貧になり政党助成金が激減したときに、政党運営効率化のために社会党職員をリストラした。過去には「経営不振にはリストラではなくワークシェアリングで乗り切れ」と騒いでいたのに・・・社会党自身の主張を否定する行動を実行した。二重の裏切りでした。反資本主義を社会党に依存していた人はこの時に社会党に失望しました。

そんな社会党・社民党に今でも共感しているのは“平和主義者”“反資本主義者”というよりは“日本嫌い”な人達ではないでしょうか。
[返信する]
[36150] 左翼の論理飛躍は正義の論理飛躍 右翼の論理飛躍は悪の論理飛躍
名前:新井秦基
日時:2008/08/05 21:36
ご意見板利用規定違反により削除しました(編集部)
[返信する]
[36149] 村山が能力無いで済むなら、東条英機も能力無いで済みます
名前:新井秦基
日時:2008/08/05 21:32
ご意見板利用規定違反により削除しました(編集部)
[返信する]
[36145] 論理の飛躍で国民をだますな
名前:中西俊
日時:2008/08/05 17:55
村山元首相、ただ1人を例にあげて、「かって平和主義者が国民を見殺しにした」と言うのは、論理の飛躍というものです。

「平和主義者」と言うからには、「平和主義者」の定義をわかりやすく説明して意見を述べるべきです。

例えば、自衛隊は憲法違反の存在であると信じている人から見れば、災害救助活動であっても、自衛隊が活動することに反対するでしょう。この意見があることは認めなければなりません。
[返信する]
[36144] すりかえ
名前:井之上文
日時:2008/08/05 17:09
村山は能力の無い政治家だっただけの話ですよ。
あれほど国民に迷惑をかけた政治家は見たこと無い。
結果 社会党は解散状態じゃないですか。



そんなこと たとえにひくのは、おかしいですよ。
[返信する]
[36138] かつて「平和主義者」が国民を見殺しにしたこともありましたね
名前:新井秦基
日時:2008/08/05 15:20
「軍隊は国民を守らない。軍隊は必要ない。軍隊による災害救助は、国民を誤った方向に導く」


こういう趣旨の記述があります。
まあ軍隊が国民に対して牙を向くときもあるのは事実でしょう。
しかし、その軍隊アレルギー或いは非軍事イデオロギーに固執した結果、結局は多数の人を見殺しにした結果になったことがあります。


阪神大震災の時の村山首相です。
彼が何を考えていたのかは分かりませんが、自衛隊の出動に対してイデオロギー的理由から非常に過敏になっていたことは間違いないでしょう。


自衛隊は地震発生直後からスタンバイしていた。
後は首相の命令を待つだけ。
しかしいつまでたっても命令は下されない。
もっと早く出動していれば、多くの命が助かっていたと言われています。


人の命を尊ぶはずの反戦イデオロギーが、皮肉なことに人の命を軽んずる結果となってしまいました。


軍国主義者も「平和主義者」も実態はあまり変わりません。
どちらかに偏ることなく、また平和・反戦・人権という聞こえのいい言葉に騙されることなく、バランスのいい思考をすることが大事だと思います。
[返信する]

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