原油高騰を背景に産業界に減産が見られ始めています。倉敷市・水島コンビナートの化学メーカーでは、原料となるナフサ(粗製ガソリン)の価格が六年前の約三・五倍に上昇。価格転嫁も思うように進まず、採算の悪化を食い止めるため、石油化学製品の生産量を減らしたり、設備を停止する動きが出ています。
燃料の高騰は漁業へも影響。岡山県漁連によると、漁船の燃料となる軽油は四年前の二・六倍に跳ね上がっているといいます。このため県内のある漁協では、従来は魚が捕れにくい小潮の三日間だけだった休漁を、一週間に広げる漁業者が増えたそう。「漁に出ても赤字になるだけ」と漁を控えるのは、漁業の減産とも言えるでしょう。
こうした折、また違った分野で、ちょっと気になる減少を目にしました。厚生労働省が発表した二〇〇八年版の労働経済白書の内容です。白書によると、「仕事のやりがい」や「雇用の安定」など、仕事に対する人々の満足度が長期的に低下傾向にある、と指摘されています。例えば、仕事のやりがいが満たされている人は約16%と三十年前に比べ半減しています。
「余力は十分なのに生産できない」「漁に出たいが出られない」と産業や漁業に広がる減産。仕事への満足度の低迷。おまけに、ガソリンや食料品の値上がりを受け、手控えられるレジャーや消費…。
社会のさまざまな側面で人々の営みが“縮んで”いるよう。戦後最長ながら「実感がない」とされる景気拡大の足元はやはり、もろいのかもしれません。
(経済部・小松原竜司)