小社と虫プロが製作し、秋に公開される長編アニメ映画「パッテンライ!!」の予告編を見る機会があった。台湾に巨大なかんがいダムを造った金沢出身の土木技師、八田與一(よいち)と少年たちの交流の物語である その功績をたたえてダムの傍らに今も残る技師の像は、実に風変わりである。作業服姿で地面に腰を下ろし、癖である右手で髪をいじくる。正装して周囲を見下ろす偉そうな姿ではなく、「一緒に座って話をしよう」と語りかけるようである 建立を断り切れなかった技師が「普段の姿なら」と注文を出した、と長男の晃夫(てるお)さんから教わった。晃夫さんの少年時代の父の記憶も、もっぱら作業服姿の像と重なるという 家族だけでなく台湾の人々にとっても、敬慕の念を託すにふさわしい飾らぬ像なのである。だから戦後の混乱期、現地の人々が像を倉庫に隠して破壊から守り、友好の時の訪れを待ったという逸話を残す 大地に腰を下ろして同じ目線で語り合い、1つの仕事を成し遂げる。「パッテンライ(八田が来た)」と人々を感動させた80年前も今の時代も、言うはやすいが難事である。
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