中国・新疆ウイグル自治区で起きた警察施設の襲撃事件で、警察当局がメディアの排除に乗り出し、取材していた日本テレビ中国総局・勝田真司記者らメディア関係者が一時、拘束され、暴行を受けた。拘束中と拘束後の様子を、勝田記者に聞いた。 勝田記者は4日午後11時過ぎ、新疆ウイグル自治区の事件現場に入った。警察当局がメディアの排除に乗り出し、香港の取材班が警察官に連行されそうになったため、勝田記者は持っていたカメラで撮影を始めた。その後、勝田記者も武装警察の中庭のような場所まで連行されて地面に顔を押しつけられ、後ろ手に縛られた。勝田記者は日本の記者だと名乗ったが、警察は聞き入れず、顔面を2〜3発殴りつけた。
施設内には先に拘束された香港メディアの記者がいた。また、東京新聞のカメラマンもおり、フラッシュライトの根元を折られたという。
約2時間後に解放された勝田記者のシャツは、ボタンが引きちぎられ、肩の辺りには地面に引き倒されたときについた汚れが残っていた。拘束されていた間、何の説明もなく、「その場に立っていろ」「電話にも出るな」「しゃべるな」という形だった。また、地元政府のメディア担当者に「撮ったテープを見せろ」「見せなければならない」と迫られたが、「記者としてテープは見せられない」と話したという。
日本テレビは5日、「正当な手続きを踏んで取材していた記者に対して暴力行為が行われたことは、極めて遺憾」とコメントを発表した。町村官房長官も、日本政府として中国側へ強く抗議することを表明している。
地元政府の担当者は5日、勝田記者らの元を訪れ、「大変に申し訳ないことをした」と謝罪した。また、武装警察の副隊長は「多くの犠牲者を出し、感情が高ぶっていた隊員たちが、記者の身分をわからずに行った行為である。心情を理解してほしい」と述べた。
謝罪を受けた勝田記者に、「NEWS ZERO」村尾信尚キャスターが話を聞いた。
村尾キャスター「拘束されたとき、恐怖を感じた?」
勝田記者「実をいうと、私に限らず、中国で取材している記者は、四川大地震のときもそうだったが、拘束されます」
村尾キャスター「よく拘束される?」
勝田記者「拘束は日常茶飯事といっていい。ただし、暴力的な扱いはそんなにあるわけではない。今回は、今まで受けたことがない羽交い締めや殴打で、相手は公安警察ではなく、限りなく軍人、兵隊に近い人。今までとは違って、正直、怖いと思った」
村尾キャスター「一連の中国当局の対応を見て、今後、取材活動はちゃんとできると思う?」
勝田記者「北京オリンピックを控えて、中央政府は基本的に取材の自由を認めているが、中国全土の警察官や役人たち、いわゆる現場に浸透していない。報道の自由の概念、大切さを、彼ら自身がほとんど知らない。個別のケースでは、同じことが繰り返されると思う」
中国外務省は、在北京の日本大使館の再発防止要請に対し、「日本を含む外国記者により良い環境を提供するよう、引き続き努力する」と伝えている。