「医師数、今後10年間増」に及び腰?
8月5日の第3回「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会(座長=高久史麿・自治医科大学長)で、海野信也委員(北里大医学部産婦人科教授)は、医師の養成数を今後10年程度増やすことや、医師養成の在り方についての研究班を設置すべきとの意見で委員が一致したとする内容の、これまでの議論の「論点整理案」を提示した。だが、高久座長は「機会がある時に議論を」と述べるにとどまり、その場で委員の合意を取り付けなかった。これについて委員からは、「合意するつもりだったのに、どうしてこうなったのか」といぶかる声が上がっている。(熊田梨恵)
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会合の冒頭、座長は海野委員の論点整理案について、「今までの2回の論点整理ということでまとめていただいた。この場での議論は繰り返しになるが、ある程度整理した方がいいと思うので、簡単に議論を」と委員に呼び掛け、海野委員が内容を説明した。
海野委員の論点整理案は、「医師養成数の増加策」と「研修制度検討の必要性」の2項目から成る。
■「医師養成数増が不可欠で一致」
「医師養成数の増加策」では、「医療需要の増加への対応、医師の過剰労働の緩和のためには、医師養成数増加が必要不可欠という認識で一致」と記載。背景として、▽医療需要は2030年ごろにピークを迎え、後に緩やかに減少▽勤務医は過重労働で、週平均労働時間が70.6時間▽医師養成数を増やさなければ若手医師数は増えない―などを挙げた。
具体的な増加策としては、「医育機関側の準備状況と医療需要の増加を勘案して、10年間程度養成数を増加していく。その後、医療需要の減少状況に合わせて、徐々に養成数を減少、現状水準程度まで戻すことを想定する」とした。 経費の試算では、医学生を一人増やすのに一年に1000万円掛かるとし、年間約400人増えるとして、最大で年間2400億円掛かるとした。実際の養成数については、各大学からの意見を聞いた上で検討すべきとした。養成機関は、既存の機関を最大限活用することが合理的としている。
■「研修制度研究班設置で一致」
「研修制度検討の必要性」では、「『後期研修のあり方』を中心として、医師養成のあり方を検討する専門家による、自律的な検討を行うための体制整備を目的とした研究班を早急に設置するべきという認識で一致」と記載。背景として、初期臨床研修制度の導入後、外科系学会入会者が25%減ったことや、診療科間の偏在が進行していることなどを挙げた。
後期臨床研修制度については、「家庭医・総合医の位置付け、診療科間のバランスを含め、医師集団としてのコンセンサスを早急に形成する必要がある。それなしには、診療科間偏在、地域間偏在の問題を解決することはできない」とした。
海野委員による説明後、高久座長は「機会がある時に議論を」と述べるにとどまり、論点整理案についての委員の合意を取り付けなかった。
これについて、厚生労働省医政局の担当者は会合終了後、キャリアブレインに対し、「通常、検討会では結果は出さないのでは。突然資料が出されたこともあり、今回は提示したということで、次回議論すると思う」と語った。
■「研究班立ち上げに期待」
会合終了後、委員からは疑問の声が上がっている。吉村博邦委員(地域医療振興協会顧問)は、「『ビジョン』の具体化検討会なのだから、合意形成していく必要がある。このままでは意見を言いっ放しで終わってしまう。『合意する』と言うつもりだった」としている。嘉山孝正委員(山形大医学部長)は、「委員の間では、既に合意する方向でまとまっていた。合意しようと思っていたのに、どうしてこうなったのか」と話している。案を作成した海野委員は「皆の意見を確認でき、合意できたらいいと思っていた」。
土屋了介委員(国立がんセンター中央病院病院長)は、「誰もこの案に異存はなかったので、座長は『合意した』と認めたと思っている。次回会合で具体的に議論し、研修医制度の研究班の立ち上げになるとよい。来年4月に機構など、何かの組織ができることを期待している」と語った。
更新:2008/08/05 20:41 キャリアブレイン
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