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マンホール事故:経験豊富で「兄貴分」 大島さん

大雨による増水でマンホール内で作業員が流された現場=東京都豊島区雑司ケ谷で2008年8月5日午後1時26分、梅田麻衣子撮影
大雨による増水でマンホール内で作業員が流された現場=東京都豊島区雑司ケ谷で2008年8月5日午後1時26分、梅田麻衣子撮影

 下水管内を突如襲った濁流が5人の作業員をのみ込んだ。東京都豊島区の下水道管補修工事現場で5日昼起きた事故。「経験豊富な兄貴分だったのに」。死亡が確認された社員の勤務先では、同僚社員が悲しみにくれた。警視庁と東京消防庁の懸命の捜索活動は夜まで続いた。

 「突然たたきつけるような雨が降り、しばらくして大声で叫ぶ声が聞こえた」。現場近くの食料品店従業員の男性(37)が表に出ると、作業服姿の男性がマンホールを取り囲み、縄ばしごを下ろしながら仲間の名前を呼び続けていた。現場前に住む女性(67)は「いつも午前10時ごろから7、8人で作業を始めていた。お昼時になると、軒下で弁当を仲良さそうにみんなで広げていたのに」と話した。近くに住む50代の女性は「作業員のみなさんは会えばあいさつしてくれるいい人たちだった。今朝、現場監督という男性が『今日は雨が強くなるから浮輪をつけて作業をしなければいけなくなるかもしれない』と冗談を言っていたのに」と言葉を詰まらせた。

 北立建設工業本社によると、死亡が確認された大島浩さん(49)は独身で1人暮らし。00年4月に別の下水道工事関連の会社から転職し、昨年11月から事故現場の現場監督を務めていた。同社には午後3時すぎ、現場の社員から死亡を告げる電話が入った。電話を受けた総務部長の足立敬吾さん(32)は目に涙を浮かべ「これまで水難事故は起こしたことがなかったのに。貴重な人材を失った。安全管理が不十分だったと思う」と語った。大島さんは経験豊富で、現場では作業員に缶コーヒーをふるまうなど「兄貴分」だったという。

 大島さんの義姉によると、大島さんは3人兄弟の末っ子。義姉は「2週間前に親類の結婚式で会ったばかり。穏やかで気遣いのできる人で、私の息子2人もかわいがってくれた。学生時代に柔道をやっていたので体格がよく、泳ぎも得意と聞いていたのに」と声を落とした。

 現場付近の下流にあるマンホールではウエットスーツやガスマスクをしたレスキュー隊員が大きな声で安全を確認しながらたて穴に入り、下水管の中を探索した。神田川では東京消防庁のレスキュー隊員が下流に向かいゴムボートを使って捜索活動を続けたが、たびたび降る雨の影響で中断を余儀なくされた。

毎日新聞 2008年8月5日 20時47分(最終更新 8月5日 21時08分)

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