8月号 「日本人におけるがんによる死亡の変化/C型肝炎はなぜこわいのか/C型慢性肝炎の治療にはどんなものがあるのか/がん危険群にはまず腫瘍マーカー検査を
●「肝臓の働きをどうすれば判定できるのか」

●「肝臓病とどうつきあうか」はこちらをクリック

どうぞ参考にしてください。

 日本人の死因として最も多いのはがんであり、死因の約30%を占めています。次に多いのは心臓病によるものであり、ついで脳血管障害によるものとなっています。
 がんの種類別では、男性の場合1990年代の後半に肺がんが胃がんを抜いて死因の第一位になったことをご存じの方も多いと思います。肺がんでは喫煙が最大の原因といわれますが、大気汚染などの環境因子の関与も無視はできません。男女ともに肺がんによる死亡は増加の一途をたどっています。一方、食生活の欧米化、とくに食塩摂取量の低下などが原因となり胃がんによる死亡率は男女ともに著明に減少しています。ただし、女性の死因として胃がんは依然としてトップの座を占めています。胃がんによる死亡率の減少に相反して大腸がんによる死亡は増加しており、男性では死因の4位に、女性では2位になっています。動物性脂肪分の多い、繊維成分の少ない食生活への変化がおもな原因といわれています。
 肝臓がんによる死亡も年々増加しており、とくに男性では死因の3位になっています。肝臓がんの約80%はC型やB型の肝炎ウイルスが原因となっていますウイルスの感染を予防すること、慢性肝炎や肝硬変の段階でがんの発生を予防すること、がんの発生を早めに診断することがたいへん大切になります。男性では肝炎ウイルスの感染に加えてアルコール多飲ががんの発生を促進します。女性では3位の肺がん、4位の乳がんについで、肝臓がんは第5位の死因になっています。乳がんによる死亡は年々増加していますが、子宮がんによる死亡は減少しています。初潮年齢の若年化、結婚、初産年齢の高齢化や脂肪摂取の増加などが原因としてあげられています。



各種がん死亡率の推移(厚生労働省・人口動態統計)

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  ●C型肝炎の70%以上は慢性肝炎になる
 A型肝炎ウィルスやB型肝炎ウィルスに感染した場合、私たちの体はこれらのウィルスをはっきりと「敵である」と認識することができ、免疫部隊を動員して排除にかかります。その結果、多くは急性肝炎で治ります。一方、C型肝炎ウィルスは隠密のように変装が上手なので(これを変異といいます)、免疫部隊はその存在に気づきません。その結果、C型肝炎ウィルスはこっそりと体の中に住みついてしまいます。
 C型肝炎はこのような特徴をもっているので、長い経過ののちに慢性肝炎、肝硬変へと進行することが多く、現在、問題となっています。C型肝炎が急性肝炎で治る割合は20%程度で、残りの70%〜80%は慢性肝炎になります。また、急性肝炎には自覚症状がはっきりしないものが多く、感染した人の半分は肝炎になったことに気づかないままです。C型肝炎では血液中のHCV抗体が陽性になります。ただし、急性肝炎の初期に陽性になるのは約半分で、全例が要請になるのは六ヶ月後です。

肝細胞がんの多くはC型肝炎からのもの
 C型肝炎がこわいのは、多くの場合、慢性肝炎がじわじわと進行し、肝硬変や肝細胞がんに行きつくことです。ウィルス感染から平均10年で70%〜80%が慢性肝炎に、20年で30%〜40%が肝硬変に、30年で約20%が肝細胞がんになるとされています。とくに肝硬変に進んでしまうと、1年に7%の割合(10年で70%)で肝細胞がんが発生するといわれています。また肝臓の繊維化が激しいほど、慢性肝炎から肝硬変に、また肝細胞がんになりやすくなります。
慢性肝炎全体ではC型が70%、B型が20%と、C型肝炎が圧倒的多数です。また、肝細胞がんの79%はC型肝炎からのものです。そのほかではB型が11%、B型とC型の重複感染が1%、B型でもC型でもないものが9%と報告されています。
 C型慢性肝炎には、目立った症状はほとんどありません。そのため、患者さんのほとんどは長年感染したことに気づかず、健康診断や献血で肝機能の異常を指摘されたのをきっかけにC型肝炎と診断されます。
わが国で献血に精度の高い抗体検査が導入されたのは1992年です。ですから、それ以前に献血や血液製剤の投与を受けた場合には、C型肝炎に感染している可能性があります。40歳以上の方は、肝機能検査とともにHCV抗体検査を受けるべきです。
 肝炎の症状があり、その診断・治療を目的に検査を受ける場合、HCV抗体検査に医療保険が使えます。それ以外は自己負担になりますが、さほど高額の検査ではありません(現在、検査料のみで190円)。
現在、40歳以上の人の住民検診にHCV抗体検査を取り入れることが、国レベルの5カ年計画で検討されています。

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  ●インターフェロン注射でがんを予防
 C型慢性肝炎の原因療法にはインターフェロン療法があり、現時点ではこれが血液からC型肝炎ウィルスを取り除く唯一の治療法です。
 しかし、C型慢性肝炎のすべてにインターフェロン注射が必要なわけではありません。一般的には、GPT50単位以下で、炎症が落ち着いている活動性の弱い慢性肝炎の場合、1〜3ヶ月間隔で肝機能をチェックすれば十分とされています。また、70歳以上ではこの治療法は必要ないとされています。つまり、人生80年とすれば、70歳でまだ慢性肝炎段階の人が肝細胞がんで死亡する可能性は低いので、高価でつらい治療を行う必要はないともいえるのです。しかし、女性の平均寿命は84歳で、さらに延びる可能性があります。したがって、本人の希望が強い場合には、インターフェロン注射を考えてもよいのではないでしょうか。
 C型肝炎ウィルスを完全に除去することに限れば、インターフェロンの有効率は約30%です。しかし、さらに20〜30%の例で、ウィルスが残っていても肝機能が改善し、肝炎の進行を遅らせることが可能とされています。また、インターフェロンが有効な場合には、肝臓の繊維化が軽くなるともいわれています。
 肝細胞がんの発生は、インターフェロン療法を受けた場合、受けない場合の約半分になります。C型肝炎ウィルスを完全に取り除くことができた場合には、肝細胞がんの発生はほとんど見られません。

●肝臓を保護する薬も有効
 肝庇護剤はウィルスをたたく力はありませんが、肝機能を改善し肝炎を鎮静化するための対症療法に役立ちます。この種の薬は、C型はもとよりB型慢性肝炎でも使われます。
 強力ネオミノファーゲンCは、肝細胞の膜を強化して、ウィルスによる肝細胞の破壊を防ぐ働きをもっています。一日40mlを注射しますが、治療開始時はできるだけ毎日、5〜7週間注射をつづけ、GPTの低下に応じて回数を減らしていきます。GTPに改善が見られなければ、最高100mlまで増量が可能です。この治療法をつづけることができた場合、肝細胞がんの発生率がそうでない場合よりも明らかに低いとされています。
 肝庇護剤にはこのほか、胆汁酸製剤であるウルソデオキシコール酸(商品名ウルソ)があります。これは飲み薬で、肝臓の血液の流れをよくする作用などによって肝機能を改善します。また、漢方薬の小柴胡湯は、肝細胞の保護、肝臓の血流改善など、肝機能を改善するさまざまな効果をもつとされています。これらの薬でGPTを50単位以下に保つことができれば、50単位以上のときよりも肝細胞がんの発生が少ないとの報告があります。ただし、小柴胡湯をインターフェロンと併用すると、インターフェロンの重大な副作用である間質性肺炎を悪化させることがあるので、併用は避けなければなりません。

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   肝細胞がんは肝機能が悪いほど発生しやすくなります。GPT、GOTの高いもの、プロトロンビン時間の低下したもの、血小板数の低いもの、HCV抗体陽性、高齢の男性などは危険群に入るので、より綿密な検査を受ける必要があります。がんがある場合に、血液中に増加してくる物質を「腫瘍マーカー」とよびます。がんが発生した臓器によって、増加する腫瘍マーカーは異なります。肝臓そのものから発生したがんを原発性肝がんとよびます。一方、大腸がん、胃がんなど他の臓器のがんが肝臓に転移した場合、転移性肝がんとよびます。これは本店と支店の関係と同じです。
 原発性肝がんには、肝細胞から発生した肝細胞がんと、胆管から発生した胆管細胞がんがあります。後者は肝細胞がんに比べて圧倒的に少なく、肝臓がんといえば一般に肝細胞がんを指します。なお、胆管細胞がんではCEAやCA19-9などの腫瘍マーカーが増加することが多く、転移性肝がんでは本店のがんで増えている腫瘍マーカーが支店でも増加するのがふつうです。

アルファ・フェトプロテイン
 肝細胞がんで増加する腫瘍マーカーは、アルファ・フェトプロテインとPIVKA-U(ピブカ・ツー)です。このうち、アルファ・フェトプロテインの「フェトプロテイン」とは日本語訳で、「胎児性たんぱく」のことであり、胎児期の肝臓を中心につくられるたんぱく質です。胎児期の肝臓の細胞は成長にともなってどんどん増えます。がん細胞にも無限に増加するという特徴があり、がんとは皮肉にも細胞の「先祖返り」であるといってもよいかもしれません。
 では、がんになると腫瘍マーカーが必ず増加するのでしょうか。残念ながら、そうではありません。また、腫瘍マーカーが増加したら必ずがんかというと、そうでもありません。これが腫瘍マーカーのやっかいなところです。
 アルファ・フェトプロテインの正常値は、血液1ml辺り20ngとされています。しかし、肝細胞がんの約35%はアルファ・フェトプロテインが正常値を示し、約65%は同200ng以下と、目立った増加を示しません。とくに最近は、アルファ・フェトプロテインの増加の見られない、小さな肝細胞がんが多く診断される傾向にあります。一方、良性の病気である慢性肝炎の約20%、肝硬変の約50%で20ng以上のアルファ・フェトプロテインの増加が見られます。ですから、腫瘍マーカーが高いからといって、すぐにがんだと思わないでください。
 しかし、慢性肝炎や肝硬変でアルファ・フェトプロテインが200ngを超えて着実に増加しつづける場合、肝細胞がんを疑って他の精密検査を受ける必要があります。なお最近は、アルファ・フェトプロテインの中のレクチン分画の検査が、がんの早期発見に役立つとされています。

PIVKA−U(ピブカ・ツー)
 PIVKA-U(ピブカ・ツー)は、ビタミンKが欠乏したときに血液の中に現れる異常プロトロンビンです。実際には血液を固める働きのないたんぱく質であり、肝細胞がんで特異的に増加することがわかりました。
 PIVKA−Uは肝細胞がんの60%で増加しますが、慢性肝炎や肝硬変で増加することは少ないとされています。逆にいえば、肝細胞がんの40%ではPIVKA-Uの増加が見られないので、先のアルファ・フェトプロテインの測定と組み合わせて、診断精度を上げなければなりません。慢性肝炎、肝硬変では肝細胞がんの早期診断のために、月一回程度、両者を組み合わせて測定する必要があります。
 このような検査は、最初の診断だけでなく、肝細胞がんの治療効果を判断するさいにも重要です。治療前に血液中にこれらの腫瘍マーカーが増加している場合、治療法が有効であれば検査値はどんどん低下していき、逆に再発が見られれば再び増加していきます。




−肝機能検査にはどんなものがあるか-
■GOTとGPTが増加する場合

 採血によって簡単にできる検査に、一般肝機能検査があります(表1参照)。その代表はGOT(AST)、GPT(ALT)です。GOTとGPT、とくにGPTは肝臓に多く含まれ、その値は肝臓の細胞の壊れ方が大きいほど高くなります。正常値は測り方や施設によって多少の差がありますが、ともにおおよそ40単位以下とされています。GPTが500単位以上と、激しく上昇した場合は、急性肝炎、薬による肝炎(薬剤性肝炎)、劇症肝炎などが考えられます。100〜500単位の中等度の上昇の場合には、活動性の強い慢性肝炎、アルコール性肝炎、胆汁のうっ滞などが考えられ、100単位以下の軽度の上昇の場合には、活動性の弱い慢性肝炎、肝硬変、脂肪肝などが考えられます。急性肝炎になると、ボクシングのアッパーカットのように、GPTが派手に急激に増加します。しかし多くの場合、回復とともに急降下します。一方慢性肝炎や肝硬変などではGPTの増加はそれほどではありませんが、ボディブローのようにじわじわと肝臓に効いてきます。


表1 主な肝機能検査と正常値(基準値)

総たんぱく (g/dl) 6.4〜8.1
アルブミン (g/dl) 3.8〜5.3
A/G比   1.1〜2.0
総ビリルビン (mg/dl) 0.2〜1.2
直接ビリルビン (mg/dl) 0〜0.4
GOT(AST) (lU/l) 8〜38
GPT(ALT) (lU/l) 4〜43
ALP (lU/l) 103〜335
LDH (lU/l) 100〜230
γ-GTP (lU/l) 16〜73
コリンエステラーゼ (lU/l) 100〜230
胆汁酸 (μmol/l) 0〜10
ZTT (KU) 4.0〜12.0
TTT (Maclagan) 0〜5.0
アンモニア (μg/dl) 30〜70
プロトロンビン時間 (%) 85〜120
ヘパプラスチンテスト

(%)

70〜130
ICG-R15 (%) 10以下
血小板数   120〜350×


■ビリルビンやALPが増加する場合

 黄疸があるときはビリルビンが増加します。ビリルビンの正常値は血液1dl当り1.2mg以下です。白目の部分が黄色いことを他人に指摘されて黄疸に気づくことが多いのですが、その場合にはビリルビンが2mgを超えているといっていいでしょう。黄疸が出る前に、尿の色が濃くなる場合がほとんどです。黄疸がある場合、アルカリフォスファターゼ(ALP)の値も増加します。これは胆汁の流れがよどんだときに増加する酵素です。黄疸がないのにALPのみの増加が見られ、早期の胆管がんが発見されることもあります。またγ-GTPという酵素も、アルコールや薬による肝障害、胆汁の流れが悪いときに増加します。

■慢性肝炎の進行を示すアルブミン、A/G比と血小板数

 血清アルブミンは肝臓でつくられる大切なたんぱく質です。血清たんぱくには、このアルブミンとグロブリンがあります。肝臓が正常に機能しているとき、アルブミンは血清たんぱくの70%を占めるので、血液1dl当り4〜6gあります。肝硬変になるとアルブミン値は低下します。また、アルブミンとグロブリンの比、つまりA/G比は、肝硬変が重症になるほど低下します。
 ところで、慢性肝炎が進行すると、肝臓がしだいに硬くなり、ついには肝硬変にいたります。この程度では肝臓の細胞が壊死と再生をくり返し、徐々に繊維におきかえられていきます。そして肝硬変になると、繊維が網の目のように肝臓全体の細胞を取り囲んでしまいます。肝硬変の肝臓の表面が凸凹に見えるのはそのためです。
  血小板には血を固める力があることをご存知の方も多いと思います。最近、肝臓の中に繊維が増えるとともに、この血小板の数が減っていくとの報告があります。逆にいえば、血小板数を測定することで、肝臓の硬さが推定できるということです。また、採血によって肝臓の繊維の量を測れるものとして、W型コラーゲンやヒアルロン酸があります。両者は、健康人→急性肝炎・慢性肝炎で肝機能が比較的落ち着いている状態→慢性肝炎で肝機能が変動している状態→肝硬変→肝臓がんの順に高くなるといわれています 。

■肝機能のさらにくわしい検査
 肝機能のさらにくわしい検査には、プロトロンビン時間、ヘパプラスチンテストなどがあります。これらは血液の固まりやすさ(凝固因子)と関係する検査法です。凝固因子は肝臓でつくられるので、肝機能の敏感な検査法として役立ちます。また、ICG(インドシアニン・グリーン)という検査法があります。ICGはグリーンの色素で、肝臓だけで代謝される性質をもっています。検査ではICGを注射して15分後に採血し、血液中に残された色素濃度を測定します(ICG-R15)。肝機能が悪化するほど血液中に残るICGの量が増えていきます。ちなみに、正常の肝臓では15分で90%以上が代謝され、血液中に残るのは10%以下です。ICGは非常に鋭敏な検査法で、よく行われます。
  以上たくさんの検査法を紹介してきましたが、いずれもひとつだけでは肝機能のすべてを測ることはできません。実際には、いくつかの検査値のどれを判断基準にするべきか、迷う場合が少なくありません。インターフェロン注射や手術など体に負担のかかる治療法を選ぶときには、これら検査の結果を総合的に判断する必要があります。しかし、検査はあくまでも検査であり、熟練した医者の目(視診)、手(打診、触診)による直感もすてがたいものです。
■肝臓の組織を顕微鏡で調べる
 ときには肝臓の組織を顕微鏡で調べることもあります。この場合、肝臓に針を刺して組織の一部をとり、繊維化(硬さ)の程度、炎症の程度を顕微鏡で調べます(針生検)。C型慢性肝炎である種のインターフェロンを注射する場合、肝炎が活動性かどうかを判定するのに針生検が必要です。GOT,GPT値と顕微鏡で見た炎症の程度は必ずしも一致しません。また、肝臓の超音波検査でがんかどうかはっきりしない影が見つかったとき、その診断のために影の部分の組織に針生検をします。
 針生検はふつう、超音波(エコー)検査で肝臓を見ながら右の助骨の間から中空の針を刺します。肝臓に針が入ったら、針の中に陰圧をかけて肝臓の組織を吸い込みます。とった組織は顕微鏡で検査します。針生検は麻酔剤を注射してから行うので、痛みはありません。腹腔鏡で肝臓の表面を観察しながら、針生検をすることもあります。超音波検査との併用により、針生検は以前に比べて格段に安全になりました。しかし、まれに針を抜いたあとに出血があるので、検査後はしばらく安静にする必要があります。なお、慢性肝炎や肝硬変では、血液を固める作用をもつ血小板数が低下していることがあります。針生検は肝臓に針を刺す検査なので、血小板数が7万以下(正常値は12万〜35万)のときは実施しないほうが安全です。

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 1.ストレスをためこまない
 

急性肝炎をのぞけば、肝臓病は経過の長い病気です。極端なことを言えば一生病気とつきあうという開き直りも必要です。一回ごとの検査値に一喜一憂したり、肝細胞がんや肝不全など最悪の未来を予想するなど、自分でストレスをかかえこまないことが大切です。
ゆったりとした気分で休息していると、脳はドーパミンという物質をたくさん分泌しリンパ球を増加させ、その活性を高めます。免疫力が高まるのはそんな時です。特に免疫の主役であるリンパ球の一種、NK細胞(ナチュラル・キラー細胞)の働きがよくなります。この細胞は文字通り体内のウイルスやがん細胞を攻撃する殺し屋です。日常生活で「ストレスが大きい」グループと「ストレスがあまりない」グループのNK細胞の活性を比較したところ、「あまりない」グループのNK細胞の活性は「大きい」グループの1.4〜1.8倍だったと報告があります。
ドーパミンは免疫力を高めるとともに、細胞の再生を促進する働きをもっています。現在肝臓病の原因の多くを占めるウイルス性肝疾患では、免疫力を高めることがもっとも自然な治療法であり、病気の進行を抑える予防法にもなると考えられるでしょう。
また大きなストレスをかかえているとしたら、内にかかえこまず医師にあずけてしまう気持ちでいましょう。そのためにもあずけがいのある医師を選ぶことも大切です。

 2.規則正しい生活をする
 

私たちには「サーカディアン・リズム」という体内時計がありますが、そのリズムをくるわせるようなイベントはできるだけ避けましょう。
アルコールはリズム変調の原因となることが多く、肝臓はアルコールを処理するために本来なすべき仕事をあとまわしにしてがんばります。ウイルスが原因となる慢性肝炎では、アルコールは肝硬変や肝細胞がんへの進行を強烈にプッシュします。肝臓病では原則としてアルコールを避けるべきです。「アルコールはストレス発散には欠かせない」という人がいますが、医師としては肝臓病の患者さんに「アルコールは少しならばいい」とは言えません。

 3.八分目の生活が望ましい
 

肝臓病では「腹八分、仕事八分、家事八分」と思ってください。慢性肝炎や肝硬変になると、肝臓でたんぱく質をつくる力が低下します。たんぱく質は肝細胞再生の原料であり、肝臓でつくられるさまざまな酵素の原料です。以前は「肝臓病には高たんぱく食」といわれていましたが、現在はふつうの食事で十分な量のたんぱく質をとることができます。むしろ食べ過ぎに注意し、「腹八分」を守るべきです。栄養のとりすぎは、脂肪肝、糖尿病、動脈硬化などの原因になります。
また、おおざっぱな言い方ですが、慢性肝炎や肝硬変の肝臓は、症状が落ち着いているときでも正常の肝臓の八分の働きしかできないと考えてください。疲れすぎは要注意で、「疲れたら休む」が大切です。そして肝臓には、どんな高価な薬よりも安静が効果的です。毎食後2、30分横になるだけでも違います。それができなければ食後にゆっくりできる時間をもち、脳からドーパミンがたくさん分泌されるようにしましょう。




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