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【お産難民を救え 助産師はいま】(1)「実家のような安心感」 (1/3ページ)
■健診、出産…母親の味方
産科医の不足で、身近に子供を産める場所がない“お産難民”が問題化している。お産難民を救う切り札として見直されているのが「助産師」の存在だ。より自然なお産をしたい、と助産所を選ぶ妊婦も少なくない。しかし、助産所は緊急時の対応などリスクを抱えていることも事実。安全に「自分らしい」お産をするにはどうしたらいいのか。6回にわたり、助産師を取り巻く現状から、産科医療再生へのヒントを探る。
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花柄の壁紙と木製のアンティークベッドをしつらえた分娩(ぶんべん)室は、ほのかにラベンダーの香りが漂う。横浜市金沢区の山本助産院。7月のある日、嶋本菜々生(ななお)さん(21)のお産が始まった。夫の真大(まさひろ)さん(21)に体を預け、ひざを立てる。嶋本さんが一番楽に感じられた姿勢だ。
産道に赤ちゃんの頭が見え始めた。「いま一番痛いところだね。深呼吸しようか」「ゆっくり息んで。上手よ」。助産師の励ましが続く。ほどなく肩から下がつるんと出て、元気な産声が聞こえた。午後3時36分。3474グラムの男の子だった。
菜々生さんは全身に汗を浮かべたまま、わが子を胸に抱いた。「やっと会えたね」。真大さんが助産師の手ほどきを受け、へその緒を切る。新しい生命の誕生を見届けるスタッフのなかに、医師の姿はない。