日本を代表する漫画家たちが若いころ暮らした東京都豊島区にあったアパート「トキワ荘」はファンの間では伝説的存在だ。
二日亡くなった赤塚不二夫さんも住人の一人だったが、漫画家仲間での出世は一番遅かった。少女漫画が一向に売れず、漫画家を断念しようとしたこともあった、と当時を振り返った漫画などで回想している。
認められたのは、連載に穴をあけた作家の代わりに描いたギャグ漫画「ナマちゃん」がきっかけだ。続いて週刊少年サンデーに一九六二年から連載した「おそ松くん」で人気を不動のものとした。
フランスをひけらかすイヤミ、おでんが大好きなチビ太と六つ子の繰り広げる破天荒なストーリーに、笑い転げたものだ。イヤミの「シェーッ」のポーズは子どもなら誰もがやった。
その後も、猫のニャロメを筆頭に、やたら拳銃をぶっ放す目ン玉つながりのおまわりさん、レレレのおじさんなど個性あふれるキャラクターを創造し、高度成長期の日本をナンセンスな笑いに包んだ。
連日のように大酒を飲み、食道がんの手術を受けても、退院してはまた飲んで「ノーメル(飲める)賞だな」とギャグを飛ばした。人を楽しませる旺盛なサービス精神が破壊的なギャグの源泉といえよう。きっと天国でも笑いをふりまいていることだろう。