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2008年8月5日

 日本海に浮かぶ七ツ島は能登半島が誕生した時の「かけら」のようなものだという。日本列島と日本海形成のナゾを秘めた壮大な「かけら」である

本紙の創刊115年を記念した舳倉・七ツ島調査で2人の記者が島に渡った。48年前の調査にも参加した80歳と、孫にも近い32歳の2人である。50歳に近い年齢差は、時とともに姿を変える人と自然を知る貴重な組み合わせだった

夕日が沈むと、オオミズナギドリの鳴き声が満天の星に響き渡り、悠久の流れを体に感じたという。一夜を過ごし海は荒れた。空を引き裂く雷雨。うなる波。命からがら帰った後に、それぞれの体験を次の世代に語り継ぐのである

調査は小さな「かけら」に足を掛けたに過ぎないが、アジアから地球規模の環境変化を探るスケールの大きい試みである。島の片隅には、水平線の向こうに小舟を繰り出した先人の勇気を物語る跡もある。世代を超え、未来に続く調査にしたいと思う

が、すぐに何かを生み出すものではない。具体的に何に貢献できるかを時間をかけて探る地味な調査である。評価は後世と、読者の判断に委ねたい。


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