[2008.8.5]
No.209
「高・高・高」三重苦の韓国経済
嚴 在漢
天井知らずの原油高騰に物価高、高い水準で増加する個人破産という三重苦に喘ぐ韓国経済。成長基調の経済政策を標榜したばかりの李 明博(イ・ミョンバク)新政権の舵取りに不満の声が高まりつつある。
2008年2月25日の大統領就任式では、活気溢れる市場経済、人材大国、グローバル・コリア、能動的な福祉、国民に仕える政府という5大国政課題を打ち出した李 明博政府。しかし、1バレル150米ドルに肉迫する原油高騰は、石油が1滴も出ない韓国経済においては適切な対応策はなく、ただ、運良く値段が下がることだけを祈る困窮な立場だ。
石油消費者価格は1リットル当たりレギュラー・ガソリンは221円(2059ウォン、1円は9.3ウォン換算)を突破、軽油も同219円台に迫っている。小型トラックで移動式屋台を営む自営業者は、1年前に比べて軽油代が月間3万2000円も跳ね上がったという。また、ソウル〜釜山を往復する大型トラックは同16万円も追加負担となり、抗議デモで政府に補助金の拡大などを求めている。ちなみに、最も一般的なタバコは1箱が269円だ。
ソウル市内のガソリンスタンドの価格表、高級ガソリンは236円に
物価や公共料金も続騰している。これまで、韓国政府は公共料金の引き上げを抑制してきたが、ついに限界に至り、電気・ガス料金に加えて、タクシー・バスなど大衆交通料金も下半期から引き上げる。8月からは、牛乳・チーズといった乳製品価格も15〜20%値上がりする見通しだ。
また、産業用電気料金も5%増、都市ガスは8月から3カ月間、3回にかけて25%(家庭用)から50%(産業用)増加するという。このような状況が続けば、向こう3年間、消費者物価の上昇率は6%を上回る見込みだ。消費者物価6%の上昇とは、年間経済成長率が6%を超えないと「マイナス成長」を意味する。08年の韓国経済の成長率は、4%台前半と予測されている。
さらには、個人破産も急増している。韓国最高裁判所によれば、個人破産の申請件数は08年上半期に6万847件であったという。04年の1万2317件から06年には12万3691件へと大幅に増加し、そして07年には15万4039件という個人破産の申請件数を記録した。個人破産は企業破産に飛び火し、最悪のシナリオとして国家的破綻という経済危機を招く恐れがある。実際、韓国経済は1997年に「IMF救済金融」という大きな試練に遭遇した苦い経験がある。
今、その時よりもはるかに厳しい経済状況だという、国民の憂慮が広まりつつある。非正規の社員数、消費者物価指数、住宅貸出金利、売れ残りアパート数など、すべての数値が悪い方に向かっている。08年7月半ば時点では、李 明博大統領の支持率は、あるテレビ局の調査によると17.8%に落ち込み、進歩系の新聞では21.6%に止まったと報じた。こうした経済状況から脱却し、数値を高くしていきたい大統領の支持率だが、米国産牛肉のBSE(牛海綿状脳症)問題に対する国民的抵抗と、海外からの深刻な経済的悪材料などが、李氏の支持率の反騰をさらに妨げている。
日中は涼しい秋風が待ち遠しいが、韓国経済の寒い夏は続く。
平日の昼間、ソウル市内のアパートの駐車場には空きがない