今回のチベット虐殺について
 これは僕が所蔵している古地図コレクションのうちのひとつであるチベットの地図だ。 出張でバンコクに行った際には必ず立ち寄る古地図屋で数年前に買ったもので、1917年にロンドンで発行されたもの。 今は僕の部屋の壁を飾っている。
 このようにチベットはもともと独立した国家だった。
 しかし、1949年に中国の軍事侵攻を受けて以来、多くのチベット人が虐殺され、仏教寺院や文化遺産が破壊され、事実上中国の領土となった。 1956年、チベット動乱が勃発、最高指導者であるダライ・ラマ14世らは首都ラサを離れインドに亡命、チベット亡命政府を樹立した。 1979年までに投獄や強制労働で亡くなった人なども合わせると120万人のチベット人が殺された。
 その後も散発的な抵抗運動が続き、1989年の大規模な抗議行動以来、中国政府はふたたび20万人のチベット人を虐殺した。 この時に制圧の指揮を執ったのが当時チベット自治区の共産党書記だった胡錦濤であり、彼がいま国家主席の座にあるのはこの時の「武勲」が評価されたからである。
 一方で中国政府はチベットに漢民族を大量に移住させる同化政策を続け、チベットにおけるチベット族は既に人口比率でもマイノリティーになっているという。 さらにそうした同化政策の一環として2006年には青蔵鉄道を全線開通させ、物心両面での更なる中国化を推し進めようとしている。 この鉄道に関口宏の息子(NHK「関口知宏の中国鉄道大紀行」)や加藤工作員(報道ステーション「加藤千洋が行く 天空の聖地・チベット」)らが乗り、嬉々としたリポートを送って中国様のお先棒担ぎのプロパガンダを買って出たのは言うまでもない。 おそらくは日本のODAも相当額がこの鉄道建設に費やされたと考えられる。
 また昨年9月には、巡礼のため雪のヒマラヤ山脈を越えてネパールとの国境地帯を歩いていた仏教徒や子供に対し、人民解放軍兵士が狙撃して殺害する様子が動画としてネット上に流されて騒然となった。 この事件では2名が死亡、数十名の行方不明者がでている。
 そんなチベットでまた苛烈な抗議行動が起こっている。 メディアはどこも「暴動」と報じているが、これは断じて「暴動」ではなく、抗議行動である。 日本のさまざまなメディアでも首都ラサの様子が映像やリポートで伝えられてはいるが、忘れてはならないのはこれらの報道のほとんどが中国当局の検閲や情報統制を経てきているものであるということである。
 チベットから外国の報道機関が自由な報道をすることができない現状で一方的な情報を鵜呑みにしてこれを「暴動」とするのは危険であり、事実今回の事件も僧侶のデモ行進を軍が武力制圧しようとして暴行し発砲して死者を出したのが発端になっており、いくつかの西側メディアは「massacre(殺戮、虐殺)」と伝え始めている。
 中国に対して総じて及び腰の日本のメディアのなかで、現在のラサの様子をもっともリアルに伝えていると思われるのが産経新聞中国総局記者の福島香織氏のブログである。 この福島氏、あまりのぶっちゃけぶりに中国政府から記者証の更新を先延ばしにされるような記者だが、こと中国相手となると提灯記事のオンパレードの日本のマスゴミのなかでは稀有な存在である。 そのブログのエントリーからは現地の緊迫した様子がひしひしと伝わってくる。 日本のメディアがここ数日伝えている「ラサ市内は平穏を取り戻し・・・」といった報道との温度差は大きい。
 こうした国で数ヵ月後には平和の祭典・オリンピックが開かれるのである。


ジンガロ、騎馬芸術、チベットからのメッセージ。
古地図収集の愉しみ
Exclusive footage of Chinese soldiers shooting at Tibetan pilgrims
情報統制を越えて漏れ聞こえるラサの悲鳴をきけ!【北京趣聞博客 (ぺきんこねたぶろぐ)】
今回の虐殺でのチベット人犠牲者とみられる写真(閲覧注意)
by theshophouse | 2008-03-17 22:04 | Asian Affair | Trackback(1) | Comments(13)
トラックバックURL : http://shophouse.exblog.jp/tb/8184473
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Tracked from わしらのなんや日記 at 2008-03-19 22:54
タイトル : チベットでのジェノサイド
随分前にBEAMSで"FREE TIBET"と書かれたTシャツを買ったことがある。もう10年ほど前になるか。そのときから、いや、1950年代から中国は何ら変わっていないわけだ。以前からチベットにおける虐殺・民族浄化については書籍などで何度も目にしていた。破壊された寺院には毛沢東の肖像画が掲げられ、漢民族の大量入植・同化政策が暴力と共に行われていると。僕たちの身の回り品が、凄い勢いでメイドインチャイナに侵食されてきたのと同時に、奴等もまたゴキブリのように増え続けていたのだ。今年「平和の祭典」オリンピック......more
Commented by klala at 2008-03-18 02:46 x
Blankey Jet Cityの「悪いひとたち」を地で行く感じですね。 久しぶりに聞きたくなりました。   ピースマークを贈るぜ!
Commented by theshophouse at 2008-03-19 00:49
>klalaさん この歌詞は ネ申 ですね。 知りませんでした。
Commented by nasikanasika at 2008-03-19 23:16
ネット上では少しずつですが情報が伝わってきつつありますね。
アスリートによる大量ボイコットを期待しています。
Commented by kamokamo at 2008-03-19 23:34 x
私は、家内と13年前にティベットを訪れた事があります。
ネパールからの陸路の旅は、かなりエキサイティングなものでした。
ラサのポタラ宮の屋上にいた時、兵隊がわらわら出てきて、
観光客は外を見るなと銃を構えて威嚇しました。
公開の処刑が行われているらしい、と分かりました。
事態は当時より確実に悪化しています。
ダライラマ法王を辞任させては、人類の損失です。
非常事態なので、基本的にスポーツに政治を持ち込む
事には反対ですが、今回は、オリンピックボイコットもやむなし。
Commented by theshophouse at 2008-03-20 01:23
>nasikanasikaさん 世界中のアスリートの脳が筋肉でできていないことを祈るばかりです。
みんなボイコットするのが最善なのは言うまでもありませんが、有力選手には敢えて参加して勝ってもらって、ポディウムの上でダイインとか、金メダルをその場で赤く塗るとか、そういうアピールもありかなと。
柔道の井上康生も頑張ってもう一度代表になってもらって、今度は胡錦濤の遺影を抱いて表彰台に上がって欲しいと思います。
Commented by theshophouse at 2008-03-20 01:47
>kamokamoさん コメントありがとうございます。 ボロ市の時に貰った猊下のノーベル平和賞記念バッジは宝物です。

聞きしに勝る恐ろしい体験ですね。 中国は13年前と何も変わっていないし、新疆ウイグル自治区も同じ状況でしょう。
日頃声高に反戦平和を念仏のように唱えてるNGOや文化人がチベットやウイグルやダルフールにはダンマリ決め込んでるのは不思議ですね。
今回のチベット虐殺はエセ人権屋やエセ平和主義者をあぶりだす踏み絵になっているもよう。

また当時のヒマラヤ越えの話、ダラムサラの話を聞かせて下さい。
Commented by サイコメタル at 2008-03-21 23:17 x
この地図の画像をブログで使わせていただいて良いですか?
チベットの独立運動を支援している(気休めだけど)のですけれど、過去からチベットが独立国として存在した事の証明として使わせていただけないでしょうか?
Commented by theshophouse at 2008-03-22 01:48
>サイコメタルさん はじめまして。 画像は天下の回りもの(笑)。 どうぞご自由に使って下さい。
ちなみに出典ですが、地図の右下に『Stanford's Geog. Estab.,London』とあります。 「Geog.」はGeography、「Estab.,」はEstablishedの略と思われます。
Commented by kamokamo at 2008-03-22 22:31 x

ダライラマ法王が辞任と言う事になれば、非暴力が暴力に屈したということですよね?ノーベル平和賞がこけにされたと言う事ですよね?
中国は春秋戦国時代の分捕ったモン勝ちを今も変わらずに
やってるっつてことですよね。
13年前、ラサ等の寺院ではティベット様式の壁画が中国様式の
ドギツイ色のものに書き換えられていました。
ここは、もともと中国であったというつもりなのでしょう。
印象に残っている出来事では、ラサ市内のレストラン(漢民族の)
で食事をしていると店員の目を盗んでチベット人が店に入ってきて器を
出して身振りで何か入れてくれ,というのでスープか何かをいれた事も
生活の厳しさと共に、漢民族を恐れてると言う印象を受けました。
大きな舗装された道路の脇にブルーシートのティベタンのうちが並んでいました。
うちの近所にダライラマ法王事務局に勤めている人がすんでいて、家内が奥様と友達になり、モモというティベタンフードの作り方を教わったりしています。
今もティベットは身近に感じていますので、早期に前進する形での決着
がつく事を願ってやみません。
オーム マニ ペメ フム


Commented by theshophouse at 2008-03-22 23:59
>kamokamoさん このコメントに気づかずに次のエントリーを書き、最後にチベットのマントラを記したのですが、なんという偶然!
中国人こそそこに込められた諸行無常を知るべきでしょう。
Commented by 大和武 at 2008-04-26 11:21 x
チベット人への合言葉を贈呈する「チャンコロ・ゴーホーム」
中国漢族は万里の長城の中へ引っ込め。「パンダ」はチベットからの略奪だ。中国共産帝国を世界に人類はチベットから排除しよう。
Commented by theshophouse at 2008-05-01 00:22
>大和武さん はじめまして。 かつてのユーゴスラビアが民族自決といういわば必然へと向かい分裂崩壊したように、中国もやがて同じ末路を辿るのではないだろうか。 またそうあって欲しいと思います。
Commented by at 2008-08-02 12:35 x
てめえに会えたら殺してやる 反中ならまず漢字を使うな 中国の漢字を使って気持ちいいことを言ってんじゃねえよ
名前 :
URL :
非公開コメント
削除用パスワード設定 :
前のページ 次のページ



■Football■Photo ■Design■Asia ■Jazz■Food  ■Pet■Moblog
by theshophouse
カテゴリ
Critique
Asian Affair
蹴球狂の詩
F1
Odyssey
Photographs
Iiko et Tama
モブログ日報
Non Category
Food
Mystery
Design
アジア人物伝
Alternative
Books
Movie
Sounds Good
昭和
号外
Profile

ネームカード
以前の記事
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
2005年 04月
2005年 03月
2005年 02月
2005年 01月
2004年 12月
2004年 11月
2004年 10月
2001年 10月
エキサイトブログ
osakanaさんのうだ..
THE SELECTIO..
V o i c e  o..
わしらのなんや日記
81歳。だからブログ。
伊藤壇ブログ
喫茶 正覚分家
最新のコメント
てめえに会えたら殺してや..
by 王 at 12:35
>hikaさん 自分の動..
by theshophouse at 23:34
>鍵コメさん どういたし..
by theshophouse at 23:33
スポットクーラーがお勧め..
by hika at 22:17
>hikaさん これも怖..
by theshophouse at 12:15
最新のトラックバック
チベットでのジェノサイド
from わしらのなんや日記
経済別に選びたい放題!チ..
from Boochanの宝探し
IKEA for ママゴト
from わしらのなんや日記
川辺のカフェ
from LOHAS PROJECT(..
男の湯たんぽ
from わしらのなんや日記
ライフログ
検索