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’08記者リポート:富山 被害者をどうサポート 思いを口にできる場を /富山

 ◇支援センター、自助グループ設立準備

 交通事故や事件の被害者の悩みや悲しみを聞き取り、日常生活をサポートする「とやま被害者支援センター」(富山市)が、被害者同士が経験を語り合い、精神的被害からの回復を図る「自助グループ」の設立準備を進めている。交通事故死者は全国で年間5000人を超え、東京・秋葉原の通り魔事件など無差別殺傷事件が相次ぐ中、自助グループの意義や被害者支援のあり方について探った。【蒔田備憲】

 富山市内で先月末、ボランティア支援員向け研修会があった。全国に先駆け、県内で犯罪被害者の自助グループ「小さな家」を設立し、被害者支援都民センター(東京都)の事務局長も務める大久保恵美子さん(60)=富山県朝日町=が、約20人の支援員に自助グループの必要性や役割について語った。

 自助グループは、事件や事故の被害者・遺族が、互いに体験を語り合う中で悲しみや苦しみを和らげようとする取り組み。被害者だけで集まったり、支援者が調整・指導役で参加したりする。

 研修会で大久保さんは被害者の胸の内について、「『頑張って』との励ましが負担になったり、事件を現実として受け止められなくなったりして孤独感を強める」と説明。「地域の支援センターが、思いを受け止める場を提供する必要がある」と強調した。

 大久保さんが、夫純也さん(66)や次男と「小さな家」を設立したのは91年。長男亨さん(当時18歳)を飲酒運転によるひき逃げ事故で失ってから、約1年がたっていた。

 加害者への怒りや喪失感に苦しむ日々。ある時、米国の被害者支援の取り組みを知り、「思いを口にできる場がほしい」と、自助グループ創設を思い立った。当時は同種団体が国内にほとんどなく、同様の思いを抱える被害者が全国から集まった。

 しかし、課題にも直面する。45都道府県の民間支援団体が加わるNPO法人「全国被害者支援ネットワーク」(東京都文京区)は、各地でグループ設立を呼びかけているが、実現したのは2割程度。渡辺直事務局長は「全地域にあるのがベストだが、継続参加する被害者が集まらない。資金不足で自助グループ運営まで手が回らない団体もある」と語る。

 北陸では、NPO法人「石川被害者サポートセンター」(金沢市)が03年に交通事故被害者のグループを作った。同「福井被害者支援センター」(福井市)は06年にいったんグループを設立したが、参加者不足で昨年から休眠。「被害の背景もバラバラで、どうやって人を集めたらいいかが難しい」と頭を悩ませている。

 富山の研修会でも、「相談に来た被害者が自助グループに参加できるかどうか、どう見抜けばいいのか」などの声が上がった。大久保さんは「まずは受け入れる場をつくり、被害者が少しでもセンターに足を運びやすくすることが大切。そのことが、相談員の力も育てる」と訴えていた。

   ◇

 大久保さんは最近、気になっていることが一つある。警察や検察の取り調べや、捜査当局や裁判所の情報提供への不満は減ったが、親族や友人、近所の住民らの発言や対応が招く二次被害の相談が一向に減らないことだ。

 「先祖供養をきちんとしていないからだ」「なぜ逃げなかった」「命が助かっただけ良かった」……。心ない言葉に傷つき、離職や転居をする遺族も多い。大久保さんは「一般市民だけが、10数年以上前から全く変わってない」と指摘する。

 研修会に参加した元銀行員の久保〓司郎さん(65)=富山県上市町=は「つらい思いをした人の気持ちを少しでも理解し、支えたいと思う」と話した。こうした姿勢が求められるのは、何も支援に携わる人だけではない。【蒔田備憲】

毎日新聞 2008年8月4日 地方版

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