何事かと思った。今月2日、オリックスの練習中、牧田勝吾内野手(34)が小川内野守備走塁コーチに腰を支えられて、号泣しながら、ロッカールームへ消えていった。甲子園で敗れた高校球児のように、大粒の涙をこぼしながら、ウォンウォンと泣いていた。
故障!? 身内に不幸があった!? さまざまな要因が頭をよぎったが、「ははぁ」と理解できた。
大石監督から、約1年11カ月ぶりに一軍復帰する清原に代わり、二軍降格を命じられたのだ。
プロ7年目の今季は数度の昇格降格を繰り返し、13試合、打率.250、1打点。7月には猛打賞もたたき出しただけに、よっぽど悔しかったに違いない。スーパースターには違いないが、走攻守、いずれもオレの方が現時点では上−。正直、そうも思っただろう。
「ヒットも打っていたし、自分が(なぜ降格なのか)、と思っていただろう。守備位置とかも考えた結果。残念そうな表情をしていた」。大石監督は、腕組みをした。
左ひざ故障の清原はスタメン出場はしばらくないため、代打となる。仮に塁に出れば、即、代走が必要となる。1人のために、3つの選手枠が“犠牲”となる。苦渋の選択であることを説明した。この時点で3位ソフトバンクとは2.5ゲーム差。番長の復活劇が、ナインにとっても最高の起爆剤となるだろう。誰もがそう考える。だが、指揮官は違う、といった。
「中にはそういう選手がいるだろうが、もし僕が現役なら、そうは思いませんね。なぜ? 自分で“商売”をしているから」。引退を決めた背番号5に対しては非情ともいえる手向けのコメントだが、食うか食われるか勝負のプロの世界−。改めて厳しさを実感した。
阿部 祐亮(あべ・ゆうすけ)
1983年(昭和58年)2月11日、大阪府生まれ。関大卒業後、外資系化学品メーカーを経て06年7月に入社。運動部アマ野球担当。小3から中3まで野球経験はあるが、非力で体質も強いとはいえず年1回は倒れる。苦手な動物はカラスで小2時に追いかけられたことでトラウマに。大阪生まれのくせに、プロ野球はロッテファン。