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2008-08-03 正社員ポジションはどこへ?

昨日のエントリを書いた元データを見ていてちょっと不思議に思ったことがあり、調べてみたら結構おもしろかったので書いとくです。
昨日のデータの中には、昭和62年(1987年)と平成19年(2007年)の比較で次のような数字があります。(一部四捨五入)
1987年の被雇用者数=4306万(正規雇用3456万人+非正規雇用850万人)
2007年の被雇用者数=5326万(正規雇用3436万人+非正規雇用1890万人)
これが、社民党、民主党、それに“ロスジェネの味方のふりをしているマスコミ”が「今や会社員のうち35%以上が非正規雇用なのだ!」と報じる元データですね。
でもさ、これって、あれっ?て思いません?
だって正規雇用の数はほとんど変わってないでしょ。非正規雇用が増えてるだけ。しかも1000万人も?これだとその意味するところは、「正社員が減って、不安定な非正規雇用が増えた」ということではなく、「正社員は減っていない。“それに加えて”、非正規で働ける機会が過去20年で大幅に増えたのだ!」というように見えますよね。よく経営者の方々が言ってる論理です。
そもそもね、全体の被雇用者数が1000万人も増えてるってどーゆーことよ?って思いますよね。20年前より今はこの国で1000万人も(いわゆる会社で)働く人が増えている。」 ふむ。
これ、誰が働き始めたの??
と思って別の統計などを見てみたら、結構クリアに世の中の動きが現れていたのでご紹介。
★★★
まずは、この20年でそもそも労働人口が増えたのかも?と思って、人口を見てみたら、25〜59歳までの人口は確かに190万人増えてます。でもこれじゃあ1000万人も働く人が増えたことを説明できない。
それに人口増は3%アップにも満たないわけで、正社員数がほぼ不変とすると、「労働人口に占める正社員の割合」も過去20年で急激に下がっているわけではない。。「正社員になりにくい世の中になった」というのは国全体で言えば嘘に近いんです。
じゃーどーゆーことよ?と。
★★★
実は年齢別に見ると非常におもしろいことがわかります。この20年の間に、
35歳未満では:正社員が239万人減り、非正規雇用が373万人増えてます。
35から54歳では:正社員が35万人減り、非正規雇用が273万人増えてる。
55歳以上では:正社員が254万人増え、非正規雇用が394万人増えてます。
すごいクリアでしょ?
ちなみに人口の変化も併せて書いておきます。
25歳〜34歳の人口:78万人増加
35歳〜54歳の人口:267万人“減少”
55歳〜60歳の人口:383万人増加
です。
二つを合わせてみるとよくわかる。55歳以上では、人口も(それよりは少ないが)正社員数も増えている。人数が増えた分の66%の人は正社員の座を確保しています。
35歳以上の中高年では人口が267万人も減ったにもかかわらず正社員数は35万人しか減っておらず、実はこの層の人は過去20年で「より正社員になりやすくなってる」んです!
そして、35歳未満では、人口が78万人増えているのに、正社員は239万人も減っています。いかにこの世代にしわ寄せが集中しているか、明確に現れています。
ちょっとびっくり。
いや、よく言われていることではあるのだが。ねえ。
★★★
で、割をくったのが若年層であることは証明されたのだが、いったい誰がその「割をくわせたのか?」ということをもう少し詳しく見てみようと。
ほぼ同じ20年で男女別、年齢別の「被雇用者数÷人口」を見てみると、「新たに働き始めた1000万人って誰さ?」というのがわかります。
男性24歳以下:88%→88%
男性25歳〜34歳以下:86%→89%
男性35歳〜54歳以下:78%→86%
男性55歳〜64歳以下:63%→78%
男性65歳以上:37%→51%
女性24歳以下:91%→91%
女性25歳〜34歳以下:73%→90%
女性35歳〜54歳以下:64%→86%
女性55歳〜64歳以下:45%→75%
女性65歳以上:27%→43%
変化の大きいところを赤にしてみました。
そう、新たに労働市場に参入してきたのは、「女性」と「高齢者」です。特に35歳以上女性の被雇用比率の上昇は驚くべきものがあります。これってまさに子育て時期の女性にあたるわけですが、子供を産まない人(結婚しない人含む)、子供を産んでも働く人、一定期間で仕事に戻る人が急増してるってことです。
この20年は雇用均等法の実施期間でもあるのですが、「女性が結婚、出産で仕事を完全に辞めてしまう」という時代が終わりつつあることがよくわかります。(中断する人はたくさんいるでしょう。)
★★★
でもね、女性の中高年なんてどうせスーパーのレジ打ちのパートでしょ?正社員ポジションはその人達にとられたわけではないのでは?って気もしたので、結局のところ過去20年で正社員ポジションは誰のところから誰のところに移動したのさ?ってのをグラフにしてみました。
下記は過去20年で正社員についている人の数が、それぞれのグループでどう変化したかを描いたものです。
水色の人が正社員ポジションを失った人達、オレンジの人達が正社員ポジションを得た人達です。一番最初に書いたように正社員の数は全体ではほとんど変わっていない。でも、誰かがそれを失い、誰かがそれを得た。合計すると増えたり減ったりして変わっていないけれど、その中身は大きく変わっているのです。(ほんとはこれも人口比にしたいのですが、夕食の準備しないといけないのでまたそのうち)
この国で、誰が権力を持っているのか、よくわかるでしょ?
右から“強い順”です。
おもしろいのは、「シニア世代では相変わらず男性が強い」けれど、その下の年齢層では女性が男性を圧倒しているということです。たとえば35歳以上女性の正社員数プラス幅は大きくはないけど、同世代の男性と比べると結構健闘しているとも言える。これは若者層でも同じ。35歳以下の男性の負けっぷりと比べれは、女性の負け分は半分に収まっている。
ふーん。
このグラフ見ていて思ったよ。選挙に行く比率、つまり投票率もこれと同じ並びなんじゃないかなって。
まっそーゆーことよ。
そんじゃーね。
★★★
そうそう、趣旨としてはほぼ同じこと、前にちきりんは書いてますね。
→http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20071228
じゃ。
毎度のことながら,データによる緻密な分析に敬服します。直感だけで書いてる僕とは大違いですね。
「中高年の人はこの20年の間により正社員になりやすくなってる」とか,「新たに労働市場に参入してきたのは女性と高齢者」という表現をされていますが,結局は,12月のブログで「既得権益者のエゴ」と表現されているように,20年前の正社員が歳を取って高齢化しただけということなんですよね?(飲み込みが悪くてすみません)