福田改造内閣が発足した。「安心実現内閣」と命名した福田康夫首相は初閣議で、原油高への緊急対策の着実な実行と国民が安心して暮らせる基盤作りを強調した。
原油や原材料の高騰に伴う経済環境の悪化は企業経営や家計などを直撃し、日々の暮らしに不安を広げている。労働市場での行き過ぎた規制緩和は雇用面での格差を拡大させ、生活に展望を開けない若者たちを生みだした。医療、年金、保険といった社会保障制度のほころびも老後を脅かす。国民生活を覆っているさまざまな不安の解消は急を要する。
これらの問題を解決するために、政府が内閣改造前にまとめたのが社会保障に関する緊急対策「五つの安心プラン」だ。医療、雇用、子育てなどの分野で検討課題や支援策を盛り込んだ。福田首相は初閣議で、同プランを直ちに実行に移し、一、二年の間に実現を図る考えを表明したが、裏付けとなる財源確保はこれからだ。
来年度の予算編成に向けて今後、各省庁の概算要求が始まる。そこで具体的な施策が見えてくる。どれだけ踏み込んだものが描けるかで、新内閣の政策実現力が試される。来年度予算の大枠を示す概算要求基準(シーリング)が閣議決定されたが、社会保障費は例年通り二千二百億円圧縮するなど歳出削減路線を継続する。重要課題に手厚く配分する三千三百億円の重点枠が設けられており、これをどう生かすかが鍵となろう。
原油高で困っている中小企業や農漁業関係への支援策は、順次緊急対策をまとめてきたが、特に漁業者へは、異例の燃料費増加分の補てんを打ち出したところだ。今後も解散・総選挙をにらんだ与党内からの圧力も加わって、予算措置を求める声は一段と高まりそうだ。財政規律を守るべきであり、限られた財源をいかに効率的に使うか、年末の予算案編成に向けての大きな課題である。
当面は次期臨時国会の召集時期と、来年一月に期限が切れるインド洋での海上自衛隊の給油活動を継続する新テロ対策特別措置法改正案の扱いが焦点になる。
福田首相は同改正案審議のため、異例の八月下旬の臨時国会召集を検討していたが、慎重姿勢に転じた公明党との間できしみが生じている。解散・総選挙を視野に民主党はじめ野党はますます攻勢を強めてくるだろう。一方、原油高対策など景気減速への対応は待ったなしである。力強い政策運営には連立与党のまとまりも必要だ。
神戸市の都賀川が増水し児童ら五人が死亡した事故を受け、国土交通省は河川敷に遊び場や散策路などを備えた「親水施設」の安全対策の実態調査に乗りだした。
国と自治体が管理する全国約二万一千の河川が調査対象になる。増水を知らせる警報装置の整備状況をはじめ、急な増水の危険性を周知する看板が設置されているかなどを今月十三日までに管理機関から回答を求め、再発防止策に生かす。
それにしても神戸の事故で、監視カメラがとらえた映像は衝撃的だった。大人のすねにも達しない程度の穏やかな流れが、瞬く間に水位が急上昇し津波のように押し寄せた。神戸市によると、局地的な豪雨によってわずか十分間で水位は一メートル余りも上がったという。
コンクリートやアスファルトに覆われた地域では、降った雨が一気に狭い川に流れ込み急に増水する恐れは高い。都市部特有の事情だが、まさかあれほどすさまじい鉄砲水が襲ってくるとは驚いた。
親水施設は身近な川を利用し、住民らに自然と触れ合う場を提供するため全国的に増えている。今回のような事故はどこでも起こりうる可能性があり、早急に安全対策を強化する必要がある。
地球温暖化のせいか、局地的な豪雨が増加している。中長期的には、貯水機能を備えた河川整備の在り方が重要になろうが、当面は警戒を呼び掛けるサイレンなどの設置や有効利用が求められる。
さらに、親水施設のこうした危険性の認識が一般に広く浸透しているとは思えない。家庭や学校、地域などで危険性を周知すべきだろう。少しでも不安な兆候があれば、川から離れる危機意識を強めたい。
(2008年8月3日掲載)